第九百二十話
規制線を越えて水中村ギルド前に到着したのだが、少々騒がしくなっているのが気にかかる。声の方に行ってみると、数人の男性が捕縛されて喚いていた。
「取材くらいしても良いだろうが!」
「ここまでマスコミを入れないなんて、お前ら陸軍は何か企んでいるのだろう!」
情報部の先輩方が縄を打たれて転がされている男達を見下ろしている。こめかみに青筋が浮いているから、怒りが爆発する寸前といったところか。
「そやつらは命を聞かずに侵入した者達かのぅ」
「玉藻様、こいつらは道を通らず森を抜けて侵入したようなのです」
見ると捕縛されている連中は軽装で、撮影機材らしき物は首から下げた一眼レフくらいの大きさのカメラしか持っていないようだった。
「規制線の所に居た者達の別働隊じゃろうか」
「いえ、どうやらこいつらはフリーのライターみたいです。新聞社や週刊誌の記者なら会社を罰する事も出来るのですが・・・」
新聞社や出版社の紐付きならば総務省が会社に圧力をかけて動きを封じる事も出来る。しかし、個人事業主のフリーライターはそうはいかない。
完全な個人なので総務省が全員を把握するのはまず不可能。当然、その動向を縛るなんて無理なのだ。そして、彼らは集めた情報の質が収入に直結する為特ダネの為なら不法行為も躊躇わない傾向にある。
「何故ここまで執拗に取材を拒否するのか教えて進ぜよう。神々が発する神気は人が触れれば魂を蝕む毒となるのじゃ。強すぎる薬は毒となるのじゃよ」
神気の抑えを少しづつ解放しながら語りかける。神気を感じたのかライター達は口を閉ざし、先輩方も緊張しているようだった。
「ダンジョン近くを情報部の部員が固め、離れた場所の規制線を沼田の部隊が担当しておるのもそのためじゃ。情報部の者達は妾の気に接してきた故、僅かながらも耐性があるでな」
神気の制御を少し緩めすぎたようで、ライター達は苦悶の表情を浮かべた。まだ気絶させる訳にはいかないので、少し制御を強くしよう。
「半神たる妾の神気ですら、抑えねばそなたの魂を消滅させるじゃろう。もし完全な神・・・しかも三貴子であらせられる素戔嗚命様の神気をそなたらが浴びれば刹那の刻にて魂は跡形もなく消え去るじゃろうな」
神との邂逅は文字通り命懸けと告げられたライター達の顔は蒼白になっている。あっ、告げた言葉の内容だけでなく浴びた神気が限界だからというのもあるのかな。
「ありがとうございます、玉藻様」
「素戔嗚命様をお待たせする訳にもいかぬ。後の処理は任せるが、神気が強くなるのを感じた段階で撤収するのじゃぞ。妾にもダンジョン外にどれだけの影響が出るのか予想も出来ぬ」
俺どころか神々にも予想出来ないから僻地のダンジョンを実験場に選んだのだけどね。素戔嗚命様、一応地上に何かあっても被害が少ない場所ですが一応手加減していただけると助かります。




