第九百十七話
これは困った。ニックの護衛に付けるには力量不足な上反逆の恐れがある。俺が持っていれば実力的に反逆の恐れは無いが使い道が無い。
「かと言って、ギルドで売る訳にもいかぬしのぅ」
「将来裏切る事が確定しているのに黙って売りつけるとか、完全に悪党よねぇ。だからと言ってそれを告げれば買う人なんて居ないでしょうし」
母さんの言う通りだ。俺もそう思うからギルドに売るという選択肢は無い。同じ理由で身近な誰かに譲渡するという選択肢も無い。
「不幸の付与がどれだけの効果を持つか分からぬ以上、他者の手に渡らせるのもマズイからのぅ。最善はこのまま放置じゃな」
譲れない、売れない、使えない。管狐はそんな評価に打ちひしがれているが、使い所が無いのは厳然たる事実だ。
「増殖からの裏切りが無ければモフモフ要員として採用したのに」
「玉藻お姉さんが居ない時でもモフれるというのは魅力よね」
舞とアーシャは管狐をモフ担にするつもりたったようだが、その道も絶たれた。迷い家に保管しておくと誰かが呼び出してモフるかもしれない。どこか誰も手にできない保管場所は無いものか。
俺が持ち歩くのが最も安全ではあるが、はっきり言って面倒くさい。どうしようかと悩んでいるとスマホに着信の知らせが届いた。
「メールの送り主は関中佐じゃな。ほう、貸し出すダンジョンは水中村で決まったようじゃ。宇迦之御魂神様と素戔嗚命様にお伝えせねばな」
貸し出しを開始する日程は神々や俺の都合に合わせると書いてある。管狐の処遇という懸念事項は増えたが、別の案件が解決した事を素直に喜ぼう。
「済まぬが、宇迦之御魂神様にご報告せねばならぬ。場を抜けるぞえ」
業務報告の為に離れようとしたのだが、神社に参るなら一緒にと皆で参拝する事になった。管狐は会話の意味が分からぬようだが付いてきている。
「宇迦之御魂神様、遅くなりました事伏してお詫び申し上げます。素戔嗚命様よりご依頼がありました件、群馬山中のダンジョンに決定致しました。素戔嗚命様のお望みの日時をお知らせ頂ければ手配致します」
『元は父上の我が儘故、気にせずとも良い。むしろ、そなたと人間達の尽力に感謝しておる』
宇迦之御魂神様の穏やかなお声が頭の中に直接響く。両親と舞、ニックとアーシャも慣れたようで伏したまま動じていなかった。
「えっ・・・はっ?こ、このお声は・・・」
すっかり失念していたけど、宇迦之御魂神様のお声を賜るのが初めての存在がこの場にいたのだった。管狐にもお声が届いているようで、全身が小刻みに震えて脂汗をダラダラと流している。
『玉藻よ、それはどうしたのじゃ?』
「実は・・・」
俺はダンジョンの宝箱から出た管狐で、扱いに難儀していると宇迦之御魂神様に説明した。管狐への評価がボロクソだが、管狐は耳に入っていないようだった。
『ふむ、ならば妾がそれを引き取ろうぞ。千年ほど鍛えれば何かしらには使えるであろう』
「御心の赴くままに」
管狐の所有権はアーシャにあるので、彼女に確認するのが筋なのだが、反対されないだろうと思い独断で承認した。
管狐よ、就職先が決まって良かったな。周囲は君より格上しか居ないだろうけど、頑張って研鑽してくれたまえ。
管狐君、宇迦之御魂神様の所にボッシュート(笑)




