第九百十六話
従順になった管狐だが、日本に残る伝承では厄介な特性を持っている事になっている。そこを確認せねばならない。
「管狐よ、この国に残る伝承ではそなたらは使役すると増えていき、やがて使役者に背き襲うとあるがどうなのじゃ?」
「五尾様、生まれたばかりのこの身には分かりかねまする。しかし、どんなに二尾が居ようとも五尾様に敵うとは到底思えませぬ」
言われてみれば、生まれたばかりの赤子が自身の将来なんて分かる筈もない。いくら妖といえどそれは変わらないのだろう。
「未来視の力があるのなら、管狐を使役して未来がどうなるか見れば良いのではないか?」
「どれだけの未来を見て背くかどうかを判断すべきか分かりませぬ。それに、五尾様にこの身の力は及びませぬ」
五十に増えたら背くとか具体的に判明していれば五十に増えた未来を見れば判断出来る。しかし、五十で背くのか百で背くのか不明ではもっと増えたら背くかもしれないという可能性が残ってしまう。
なので未来視で確認するのは無理に近い。それに、俺に対して管狐の権能が効かないのなら根本的に無理である。
「それなら、誰かが召喚し直したら権能が使えるのでは?」
「お父さん、権能を使えても何匹で背くのか分からないからダメですよ」
父さんは権能が効かない事に気を取られ、背く数の特定が出来ない事を忘れていたようだ。母さんに指摘されバツが悪そうな顔をしている。
「でも、他の人が召喚しても二尾になるのかを確認するのは大事だと思うの」
「それはアーシャの言う通りじゃな。では一度戻してみるとしようぞ」
俺は竹筒に管狐を戻してそれをアーシャに渡す。再度現れた管狐の尻尾は二股に分かれていなかった。どうやら俺以外が召喚すると一尾になるらしい。
「こっ、この身の尻尾が・・・この身の尻尾が一本にいぃぃぃぃぃ!」
二尾から一尾になったショックで固まる管狐。それに構わず女性陣は検証を始めていた。
「尻尾のモフモフは少し落ちてるわ」
「胸元や頬のモフモフも少し固くなってるわね。この子が言った通り、尻尾が多いとモフモフ度も比例するのね」
舞が尻尾をモフり、母さんが頭や胸元をモフり、アーシャが背中を中心にモフりまくる。本人がフリーズしているからって好き勝手にモフりまくりだな。
「はっ、だから勝手にモフるな!五尾様五尾様、お願い申し上げます。今一度この身を二尾に!」
「玉藻お姉ちゃん、二尾の方がモフる尻尾が多いしモフモフ度も上がるから」
「おおっ、助勢感謝いた・・・モフる前提で言うでないわっ!」
二尾に戻す事に賛成した舞に感謝しかけた管狐だったが、その目的がモフる為だと知り抗議に切り替えた。
「ニックの護衛に良いかと思ったのじゃが・・・これでは使えぬのぅ」
管狐に戦闘能力があるならニックに渡して護衛にしたのだが。直接的な攻撃力が無いからなぁ。せめて狐火でも使えれば良かったのに。




