第九百十五話
「大きな口を叩いておったが、具体的に何が出来るのじゃ?」
「はっ、はい。この身は人の過去を覗いたり、未来を予測する事が出来ます。それと、人に幸や不幸を付与する事も出来ます!」
空中で正座するという器用な真似をしながら己の能力を報告する管狐。ダンジョン産とはいえ、行使できる力は日本の伝承に準じた物になっているようだ。
「ごっ、五尾様。よろしければこの身に五尾様とあの人間どもの関係をお教えいただけませんでしょうか」
「良かろう。ここにおる人間達は妾の家族と家族同然の者達じゃ。妾は宇迦之御魂神様の眷属じゃが、人の世に干渉する為に人の子として生を受けたのじゃ」
別に隠す必要もないので、管狐の問に正直に答えてあげた。それを聞いた管狐の顔が引き攣っている。 遥かに格上な存在の身内に無礼を働いたのだ。報復されると怯えるのも無理はない。
「ご無礼の段、平に、平にご容赦を!」
「謝罪する相手が違っておる。許しを得ねばならぬのは妾ではなく彼女達じゃ」
管狐はモフモフから逃れて空中に浮いていたので、俺達は母さん達からは少し離れてしまっている。謝罪させる為に降りようと思ったが、その前に一言言っておこう。
「取り敢えず危険は無いので父さんとニックも来て大丈夫じゃ。それと、母さん達は話が終わるまでモフるのは我慢してほしいのじゃが」
「大丈夫、狐さんのモフモフ度は確認したから玉藻お姉ちゃんの尻尾をモフるわ」
「モフらないと言わずに、妾の尻尾をモフるのじゃな」
モフる機会を逃さないのはモフラーの鑑と言えるけど、真面目な話をするのでちょっと我慢してほしい。
「五尾様のご家族とはいざ知らず、無礼を働きました事伏してお詫び申し上げます」
「はい、謝罪は受け取りました。それにしても、随分と態度が変わったわねぇ」
皆の所に降りた管狐は、速攻で母さん達に詫びを入れた。母さん達はあまり気にしていなかったようで、すぐに管狐の謝罪を受け入れるのだった。
「我ら狐界において、力の強さを示す尾の数は絶対なのです。この身のような二尾ごときが五尾様に従うのは絶対の摂理に御座います」
狐の世界は結構厳しいカースト制が敷かれているようだ。俺は狐の社交界に疎いから知らなかったな。これは情報収集しておいた方が良いかもしれない。
「でも、狐さんなら九尾が最高でしょ。玉藻お姉ちゃんはまだ半分過ぎた所よね」
「殆どの狐は、生涯をかけて二尾となれるかどうかなのです。五尾様ともなれば一生涯で一度もお目にかかる事すら無い高位の存在なのです」
何かアッサリと尻尾が増えていったけど、これってそんなに大変な事だったのか。比較対象が身近に居ないから、これが普通なのか可笑しいのかも判断出来なかったからな。
「それでは、二尾で生まれたあなたはとても凄いのですね」
「それは否定致しませんが、五尾まで成れたお方に比べれば塵のようなものに御座います」
アーシャに褒められて少しドヤ顔になった管狐だったが、すぐに表情を戻していた。これならもう皆に失礼な態度をとったりしないかな。




