第九百十四話
竹筒は俺の魔力を吸って強い光を放ち始めた。その光は竹筒の先端に集まり獣の姿をかたどっていく。だが、光が収まった時竹筒の先には何も存在していなかった。
「玉藻お姉ちゃんに比べるとモフモフ具合がイマイチね」
「舞ちゃん、玉藻お姉さんのモフモフは至高だから比べちゃダメよ」
「そうよ舞。この胸元とか頬なんて中々のモフモフよ」
離れた場所で待機していた筈の舞とアーシャ、母さんの声が近くから聞こえてきた。そちらを見ると、母さんが白い狐を抱きしめ二本の尻尾を舞とアーシャがモフっていた。
「いつの間にモフったのじゃ。動体視力が高い妾の玉藻アイで見えなかったのじゃが・・・瞬間移動のスキルは無かった筈じゃよな?」
素早いモフモフ、俺でなければ見落としていた。と言いたい所だが、俺でも見落としていた。おっ、三人のモフモフで硬直していた白狐が再起動したようだ。
「ええい、触るな下賤な人間ども!俺は格式高き管狐だぞ!・・・流石は俺、いきなり二尾とはそこらの管狐とはやる事が違うな」
三人のモフモフから逃れて空中に浮いた管狐は、触られた痕跡を消すかのようにモフられた場所を毛繕いした。
尻尾のお手入れをした際に二尾である事に気付いたようだ。発言から察するに、普通の管狐は一尾で力をつけたら尻尾が増えるのだろう。
「やっぱり尻尾が多い方がモフモフなのかしら?」
「尻尾の数は妖力の強さに比例する。妖力が高ければこの身も美しくなっていくのだ・・・おい、人間ごときが気安く俺様に話しかけるでない!」
母さんの問に上機嫌で答えた管狐だが、すぐに機嫌を崩し母さんに暴言を吐いた。こいつ、随分と自尊心が高いようだ。これは一つ教育的指導を行う必要がありそうだ。
「ほう、そなたはそんなに偉いと言うのかえ?」
「当たり前だ、管狐は数あれど、二尾には選ばれし者しかなれぬ。その二尾に生まれた時からなっている俺はエリート中のエリートなのだ!」
得意げに管狐界のカーストを説明する管狐。調子に乗っているようなので、上には上がいる事を少し分からせてあげよう。
「そんな俺様に、妖力を持たぬ人間ごときが言葉をかけるなど言語道断。俺の姿を見れただけで・・・何だこの力、妖力とは違うようなぁぁぁぁぁ!」
力の抑制を少し緩めて神気を少し垂れ流す。あまり抑制を緩めると、母さん達に影響してしまうかもしれないから慎重に制御を緩めていった。
「生まれたばかりでも基礎知識はあるようじゃが、これは知らぬようじゃな。教えて進ぜよう、これは神の眷属が纏う神気というものじゃ」
「神の眷属って・・・しかも五尾、五尾のお方とは知らずご無礼を!平に、平にご容赦願います!」
神気に気付いた管狐は、俺の説明を聞き姿を見て慌てて平伏し恭順の意を示した。身体が小刻みに震えているが、ちとやり過ぎてしまったかもしれないな。
「絵に描いたような小悪党ムーブだったわねぇ」
「舞ちゃん、言わないであげて」
管狐にトドメの一撃を食らわせる舞。止めて、管狐のライフはもうゼロよっ!




