第九百十三話
すっかり記憶から抜け落ちていた竹筒。アーシャと舞に鑑定してもらう事を許してもらい、板橋あたりのギルドに持ち込むつもりだった。
「今、マスコミ関連の件で注目されている神使様がギルドに行くのですか?探索者に囲まれて身動き取れなくなると思いますが?」
「玉藻ではなく男の優で行っても・・・」
「同じ、でしょうね」
翌日出勤して関中佐に相談するなりバッサリと切られました。どうやら俺は男のままでもギルドに行けないようだ。
「そんな事をせずとも、市ヶ谷にも鑑定持ちは在籍しています。すぐに鑑定させますよ」
どうやら市ヶ谷の本営に鑑定持ちが所属しているようだ。ギルドに行かずとも鑑定出来るならそれに越したことはない。中佐に根回しをしてもらい、竹筒を持ち込む事に。
「妾が出向くつもりでおったのじゃが・・・」
「神使様に御足労願うなんてとんでもない事に御座います。いつでも用命頂ければ参上致します」
こちらから竹筒を持って行こうと思っていたら、鑑定持ちの人が情報部に来てくれた。尚、優から玉藻になっているのは迷い家に置いていた竹筒を取ってきたからだ。
「これは、内部に霊的存在が封じられています。魔力を流す事で現し世に出現させられるかと」
「ふむ、召喚獣のような存在かのぅ」
石川大尉がモフモフを召喚していたが、そんな存在を呼べるという事だろうか。それならアーシャかニックに持たせればいざという時の保険になりそうだ。
「・・・という訳で、この中には何かしらの霊的存在が居るそうだ」
一日の仕事を終えて迎賓館に戻り、滝本家とロマノフ家が揃った部屋で鑑定の結果を報告した。
「お兄ちゃん、その中に新しいモフモフが入っているのね」
「いや、モフモフかどうかは分からないからな」
蛇系やトカゲ系だったらモフモフではなくツルツルだ。それはそれでスベスベな手触りを堪能出来て良いかもしれないな。
「優ちゃん、迷い家で呼び出してみるというのはどう?」
「ここで呼んで何かあったら大変だからな。母さんの提案は良いと思うぞ」
好奇心に目を輝かせた母さんの提案を父さんが後押しする。ニックとアーシャ、舞も期待に満ちた目で見ているので、確認しないという選択肢は無さそうだ。
「では迷い家で呼び出してみましょう。危険があるかもしれないから待っていてもらうのは・・・無理だよねぇ」
何が出てくるか分からないので、俺だけで迷い家に入るのが最も安全な策なのだ。しかし、早く見てみたい皆にそんな道理は通じる筈もなかった。
「舞の慣性制御で守れば大丈夫だよ」
「クマさんもちゃんと持っていきますから!」
舞の慣性制御とアーシャのクマちゃんという二重の護りを言われては、危ないからという理由で止める事は出来ない。
「まあ、それを抜いて危害を加えるのは至難じゃろうな」
という訳で、全員で迷い家に入り海岸に陣取る。ここならば危険な存在が出てきても家屋や畑に被害が出る事は無い。
「それでは魔力を込めるぞえ」
念の為舞達から少し離れて竹筒に魔力を込める。果たして何が出てくるのやら。




