第九百十一話
あの会見から数日。総務省の動きは早く、問題の報道機関各社にはその日のうちに警視庁と合同のガサ入れが入っていた。そして多くの逮捕者が出るに当たって一部を除いたマスコミは官憲に対する反撃を試みるのであった。
「やると思ってたけど、やっぱりやったかぁ」
「でもこれ、騙される人居るのかな?」
テレビの情報バラエティーを見ていた俺と舞は熱弁を振るうコメンテーターの姿を見て呆れてしまった。論じている内容が酷すぎる。
『軍は利益を守る為に我々の声を封殺しようとしています。これは言論の自由を否定し、臣民の声を無視する大罪です!』
『かく言う私達も官憲の手により囚われるかもしれません。しかし我々は口を閉じません。声を上げ続ける事が正義を貫く唯一の手段なのです』
軍の利益を潰す報道をしたから弾圧されているとでも言いたげな論理展開だが、実際は事実と異なる捏造報道にて公務を妨害するような真似をしたからだ。
「お兄ちゃん、ネットの書き込みでも皆呆れてるよ」
「そもそもの理由が捏造報道で陸軍を糾弾した事だって会見で明らかになってるからなぁ」
いくら陸軍と内閣がグルになってマスコミを潰そうとしていると叫んでも、多くの臣民は全てのマスコミが叩かれている訳では無いと知っている。
誤報に乗せられる事なく冷静な判断をした報道機関も少ないながら存在した。総務省はそういった会社には全く手を付けていないのだ。
『逮捕されたテレビ局幹部、入管法違反だって?』
『大陸や半島からの不法入国者だったって話だよ』
捜査により、一部メディアの上層部に国籍を偽ったり人間自体が入れ替わっている者が紛れ込んでいたらしい。
マスコミはその事実を報道せず、不当逮捕と騒いでいるが、ネットでは捜査関係者からのリークという形でまことしやかに話されていた。
「しかし優、そんな誤魔化しがよく今までバレなかったな。スキルで調べられたらすぐ露見するだろう」
「父さん、真贋判定のスキル持ちは少ないからね。うちは軍や官公庁との繋がりが深いから真贋判定スキル持ちと面識あるけど、民間の会社には一人も居ないのが当たり前だと思うよ」
俺達の周囲にはレアスキルやチートスキル持ちが多過ぎる。家族全員がトンデモなスキル保有者という時点で絶対におかしい。
「そういえば優ちゃん、昨日迷い家に行ったらリビングに竹の筒が置いてあったけどあれは何かしら?」
「あっ、すっかり忘れてた。あれ、アーシャが見つけた宝箱に入っていたんだ」
一連のドタバタで綺麗に頭から飛んでたな。どこかのギルドで鑑定してもらう必要があるけど、見つけたアーシャに一言言ってから持っていこう。
ギルドに行くと言ったらアーシャも来たがるかもしれないけど、護衛無しなんて訳にはいかないから俺だけで行くのが良いだろうな。
え、俺も神使様だから盛大な護衛が必要だって?玉藻ではなく陸軍中尉として行くからセーフです。




