第九百九話
「さて、今関中佐が話した通り素戔嗚命様はダンジョンの設定を変えに行くとは一言も申されておらぬ。にも関わらず、報道ではそれが確定事項のように報じられておるな」
「我ら陸軍は、誤った情報により不当な非難を全国ネットで放送された番組にてされた訳だ。これは到底看過できぬ」
陸軍を非難する報道を行なっていた局の記者たちが目を逸らす。彼らがその報道に携わってはいないだろうが、後ろめたくなるのは当然だろう。
「マスコミは神々の御意向を歪めて臣民に伝え、神意を自分達の利のために捏造している。我ら宮内省はそう判断し、誤報を広め陸軍に謂れ無き非難を行なった報道機関に対して神敵と認定する準備を進めています」
「ちょっ、ちょっとそれは大袈裟ではありませんか?!」
糸政務官の発言に対し、記者の一人が衝動的に立ち上がり叫んだ。恐らく彼の会社は陸軍非難に加担したのだろう。
「どこが大袈裟なのか分からんな。陸軍は神意を受けた玉藻様の要請に沿い、素戔嗚命様のお望みを実現すべく動いていた。それを意図的に妨害するなら、神の御意向に逆らう神敵と判断するのは自然ではないかね?」
「上はそんなつもりでは無かったかと・・・」
「ほう、ではどんなつもりであったのかな?事実と異なる虚報を使ってまで神々のご依頼を妨げたのは、どんな意図があっての事だと言うのかね?」
さらなる糸政務官の追及に、記者は完全に黙り込んでしまった。発言が帝国全土に放送されている以上、下手な発言は会社を滅ぼしかねないからだ。
恐らく、飛ぶ鳥を落とす勢いの陸軍を叩ければ視聴者に多大なインパクトを与えて視聴率が跳ね上がるとでも踏んだのだろう。
しかし、それを正直に言ってしまえば神敵認定されるか国家反逆罪に問われるかという状況になってしまうだろう。
神敵認定に比べれば国家反逆罪の方がまだマシかもしれないが、どちらにしても会社とそこに勤める社員は破滅する未来しか見えない。
「我々総務省は、今回の捏造報道事件を徹底的に調査する事を宣言します。調査に対して非協力的な言動を取る者は、須らく神敵として宮内省に報告すると認識して下さい」
伊東政務官の宣言は有無を言わさぬ強いもので、報道の自由や個人情報の保護を理由とした情報隠匿など許さないという意思を感じた。
「そっ、それは情報提供者の個人情報も隠すなと言う事でしょうか?」
「いつ、誰が神意を歪めたのかを正確に調べる必要があります。その者は明確な神敵なのですからね。神敵を庇う者は同罪です。それでも庇うと言うならご随意にどうぞ」
情報源を秘匿するのは構わない。その代わり、神敵認定されるけどそれは覚悟しろと突きつけられたのだ。質問した記者の顔色は真っ青になっていた。
「最近神々を侮り不敬を働く者が増える傾向にあるようだ。神々が正しき者のみを天の浮舟に乗せ、日の本を沈めるような事態にならんようにせんとな」
糸政務官の脅しともとれる言葉で会見は終了した。神々のお気に入りだけを迷い家に避難させて保護し神罰を下す、なんて事も出来るからなぁ。




