第九百八話
会見用に設えられた部屋の入り口。そこで待機する俺の耳に中で待つ記者達の話し声が聞こえる。玉藻イヤーは地獄耳なのだ。
「急な会見だけど、これってあの報道への釈明だろうな」
「玉藻様を利用して利益を増やそうとする陸軍を徹底的に追及しないとな」
中に居る記者達は、あの報道が正しいと信じているようだ。自身で裏とりをしていない情報をそこまで信じるのは、他社とは言え仲間だからなのだろうか。
「お待たせしました。これより陸軍と宮内省、総務省の合同記者会見を開始します。尚、この場に相応しくないと思われる言動をとった記者は問答無用で退室していただきます。ご留意下さい」
俺達を先導してきた宮内省の職員が先に入室し、会見の開始を宣言した。それを受けて俺達も入室する。席に座り、まずは関中佐が口火を切る。
「陸軍情報部の関中佐だ。まず玉藻様が素戔嗚命様に託されたご依頼について説明する」
関中佐は流れるように素戔嗚命様からのご依頼内容を説明していった。その中では大宮ダンジョンのように設定変更を行うなどとは一言も告げられなかった。
「・・・以上が素戔嗚命様からのご依頼である。質問があれば受け付ける」
その言葉が終わると同時に全ての記者が一斉に挙手をした。この状況で質問しない記者なんて、記者としての資質に欠けると断じられても仕方ないだろう。そんな記者はこの場には居なかった。
「一部メディアにて報道された内容と違う説明でしたが、今回為された説明が正しいと言う事でしょうか」
「中佐の説明に間違いがない事は妾が証明するぞえ。そちはあの報道がどのような経路で齎された情報を基に報じられたか存じておるのかえ?」
「いえ、他社なのでそこまで知りませんが・・・」
質問してきた記者は俺に反撃されてたじろぐ。同じ会社なら情報提供者を知っている可能性はあるが、他社なら知らなくて当然だろう。
まあ、例え知っていても言う事は無いだろうけどね。彼らは情報提供者を頑なに秘匿する。もし簡単に情報源を晒せば、情報を提供する事に躊躇う者が出るだろうからだ。
「では問おう。身元も知らぬ情報源と、直に素戔嗚命様より依頼を賜った妾。そなたはどちらの言を信用するのじゃな?」
「そっ、それは玉藻様に御座います」
身元が知れぬ情報提供者と、身元を明かして情報を提供する者。どちらの方が信用出来るかなんて火を見るより明らかだ。
まあ、そうで無かったとしても神の使いに真正面からこう問われて「神使様より誰とも知れぬ一般人を信用します」なんて言えないだろうけど。
もしもそんな答えをしようものなら、ネット民に個人情報を特定&晒されて家族ごと肩身が狭い思いをする事になるだろうな。
あれ、これってパワハラになるのかな?自治体が主催してる弁護士無料相談会に行って相談しておいた方が良いかな。帰ったら区役所に日程を聞いてみよう。




