第九百話
市ヶ谷に戻った俺と関中佐は、素戔嗚命様からの依頼を成就すべく動き出した。
とは言え、各方面への根回しは既に先輩方が動いてくれているし、書類仕事などの実務は関中佐任せとなる。
「玉藻様は大宮ダンジョンを攻略なされたばかりなのです。まずは休養を取られる事が肝要かと愚考致します」
手伝おうとした俺に休むよう言う関中佐。書類仕事は苦手だろうに、その手伝いよりも俺の休息を優先する。こんな気遣いが先輩方に慕われる理由だろう。
「すぐにお車を手配致します」
「それには及ばぬ。このまま空歩で帰る方が早かろう」
陸軍本営から迎賓館までの距離はそう遠くない。下手をすると車の手配が終わる前に帰りつけそうだ。なので中佐の申し出を断る。
すれ違う軍人達から大宮ダンジョン攻略の祝いとお礼を言われる。それに応えつつ外に出て空歩を発動。高度を取って迎賓館に向かった。
その途中、全国チェーンを展開する有名コンビニの看板が目に入った。迎賓館に来る前は舞とコンビニに行ったりしていたが、最近は全く足を踏み入れていない。
「ふむ、久し振りに寄ってみるかのぅ。舞とアーシャが好きそうなコンビニスイーツを買って帰るのも良いかもしれぬ」
甘い物を食べていない訳では無い。迷い家で作るお手製スイーツを堪能しているし、迎賓館のパティシエが作った高級スイーツも食べている。
しかし、どんなに高級スイーツを食べていようとコンビニのスイーツを食べたくなる時も時折あるのだ。いつ買うの?今でしょ。
という訳で、俺は人通りが途切れたタイミングを見計らってコンビニの前に着地する。人が居る前にいきなり空から人が降ってきたら驚かせてしまうので、そこはちゃんと配慮している。
「いらっしゃいませえぇぇぇぇぇぇぇ!」
センサーに感知され、開いた自動ドアから店内に入る。入店を知らせる独特な音楽を聴きながら脇に積まれている買い物かごを一つ手に取る。
入店したお客にマニュアル通りの挨拶をする店員の声が変だったような気がするが、特に問題は無いだろう。
目当てはスイーツだが、折角なので一通り店内を散策する事に。まずは大きなガラス窓に沿って配置されている雑誌コーナーからだ。
「種類も少ないし、厚さも薄いのぅ」
今世で子供だった頃は、もっと扱う雑誌の種類が多くてそれぞれの雑誌も厚かった。しかし今では電子書籍が幅を利かせていて、紙の雑誌は勢いを無くしている。
隣の列に移動し、スナック菓子の袋を適当に放り込む。塩味のポテトチップくらいなら自作も出来るが、他の味は難しいのでここで買い込む。
アイスも有名どころを中心に次々と放り込む。陸軍からお給料が出ているが、使う事が殆ど無いのでかなり貯まっているのだ。
最後にスイーツも全種類人数分かごに入れてレジに向かう。しかし店員さんが固まったままで対応してくれない。
「精算して欲しいのじゃが・・・他の店員さんを呼ばねばならぬか?」
「しっ、しっ、しっ、神使様がご来店?!店長、店長ぅぅぅ!」
再起動すると同時にバックヤードに駆け込んで行ったり店員さん。店長さんを呼びに行ったのだろうか。俺はただ精算して欲しいだけなんだけどね。
作者「そりゃ、いきなり神使様が来店したら店員さんはパニクるだろ」
玉藻「てへっ」




