第八百九十二話
「これは悩むのぅ・・・」
アーシャの千里眼は強力だ。次の階層に降りてすぐに次の階層への渦を探し出せてしまう為、最短距離で迷うことなく次の階層に進めてしまう。
舞の慣性制御は強力だ。いかなる物理攻撃も通す事なく防いでしまう。そんな二人が居れば、スレイプニルの突撃もリザードマンの攻撃も俺達には届かない。
デンシカの雷撃も、俺の空歩を慣性制御で加速させ普通なら身体に負担がかかりまくる機動をとる事で尽く躱していく。
そんなこんなで順調に進んでいたのだが、俺はそれが故に重大な選択を迫られる事になったのだ。
「玉藻お姉ちゃん、もう一日くらい遅れても大丈夫よ」
「初日は始業式だけの筈です。授業もありませんし」
「そうは言うがのぅ、そういった学校のイベントは貴重なのじゃぞ。出席出来る回数に限りがあるでな」
舞とアーシャが攻略に同行するのは春休みの間だけ。その約束で同行してもらっているのだが、その期限が来ているのだ。
まだ数日の猶予はあるが、二十階層に戻る時間を考えるとそろそろ戻り始める必要がある。ギリギリという訳では無いが、あの渦モドキで確実に一階層に飛ばされるという保証が無い以上、違う階層に飛ばされても間に合うだけの余裕を持たせなければならない。
「ここまで来たら、最後まで行って八意思兼命様に設定を変えていただいた方が確実です。その方が玉藻お姉さんといられますし・・・」
「アーシャよ、最後に本音が漏れておるぞ。順調に進めればそれで間に合うのじゃがな、十八階層のように厄介な組み合わせじゃと間に合わないやもしれぬのじゃ」
進んだ場合、順調にいけば八意思兼命様に設定変更してもらい一瞬で地上に戻れる為期限内に地上に帰還する事が出来る。
しかし、面倒なフィールドで手間取った場合間に合わなくなる可能性もある。こればかりはその階層に行ってみないと判明しない為、賭けになってしまう。
戻る場合、通過してきた階層を行く事になるので所要時間の計算が容易でそれが狂う可能性はまず無い。しかし、二十階層から渦モドキを利用するので、もしあれが一階層に飛ばすのではなくランダムに飛ばす性質だった場合間に合わなくなる可能性がある。
だが、十五階層以下ならば普通に地上を目指せば良いし、十五階層から二十五階層ならばまた二十階層の渦モドキを使えば良い。
三十五階層以上に飛ばされればそのまま最終階層まで進めば良いので、戻る場合間に合わなくなる可能性はかなり低くなるのだ。
しかし、戻った場合二人を送り届けた後でまた潜り直さなければならない。そして、この先の階層では自分で渦を見つけなければならないというデメリットがある。
「確かに学校行事は大事だけど、玉藻お姉ちゃんのお仕事を手伝うのも大事なんだよ」
「私も・・・始業式に出られなくても玉藻お姉さんと一緒に攻略したいです」
「わかったのじゃ。もし始業式に間に合わなんだ場合、全ての責は妾が負う」
悩んだ結果、二人には最後まで付き合ってもらうという決断を下した。そうとなったらダッタン人の矢よりも疾くダンジョンを駆け抜けてやる!
作者「ダッタン人の矢よりも疾くって・・・お前は妖精パックか(笑)」
玉藻「マッハ十五のスピードの方が良かったかのぅ?」
玉藻ちゃん、今の読者様はスーパージェッターなんて知らないと思うぞ。




