第八百九十話
俺と舞が警戒する中、アーシャはサクッと二十三階層への渦を見つけてくれた。二人には迷い家に戻ってもらい、空歩で渦まで駆け抜ける。
二十二階層では一緒に行きたいとせがんだ二人も、今回は素直に迷い家に戻ってくれた。まあ、ヌメヌメとした舌を伸ばして絡めてくる巨大カエルと戦いたいという女子高生は居ないだろう。
特筆するような事もなく二十三階層への渦に到着。草原フィールドでモフモフな赤獅子さんがお出迎えしてくれた。
このサイズの猛獣をモフるのは流石に危険なので、神炎さんに丸焼きにしてもらいました。ここで負傷するようなリスクは犯せません。
ここもアーシャに二十四階層への渦を見つけてもらい、一人空歩で進む事に。半ば作業と化しているが、それを言うと普通の探索者達に白い目で見られそうだ。
本来ならば赤獅子と死闘を繰り広げながらあてもなくフィールドを彷徨って渦を探す筈が、空を一直線に走り渦に向かうだけの簡単なお仕事になっている。
優秀、と言うかチートなスキルによって攻略難度がここまで変わるのだ。スキル最上主義が蔓延るのも無理はないと思ってしまう。
続く二十四階層。ここも他のダンジョンと同様幻狐さんが待ち構えていた。森林フィールドの樹上から飛び降りて奇襲する狐さん。
幻により増殖するも、尻尾が一本の狐が五本の尻尾がある俺に勝てる筈もない。攻撃を躱しすれ違う瞬間、尻尾にてそれぞれの幻狐に打撃を加えた。
その一撃にて幻は消え去り、残された本体は尻尾の殴打にて動きが鈍っている。モフり欲を抑え神炎さんで魔石に変化してもらった。
「二十四階層も普通じゃったよ。まあ、レアモンスターが二度出ている以上また出る可能性は極めて低いのじゃがな」
「普通の狐さんなら玉藻お姉ちゃんの劣化版ね。まあ、モフモフで玉藻お姉ちゃんに勝てるモフモフなんて居ないけど」
獣系モンスターに対する舞の評価基準は、モフモフ度で決まるらしい。まあ、舞の慣性制御にかかればどんなモフモフモンスターも動きを止められてモフられるしかないのだけど。
「舞よ、お主二十台の階層は危険じゃと妾に説教せなんだか?」
「玉藻お姉ちゃん、狐さんの最上位は九尾の狐と昔から相場が決まっているの。一尾の幻狐が五尾の玉藻お姉ちゃんに勝てる道理が無いわ」
確かに、舞が言う通り妖狐の世界では尻尾の数が妖力の強さを示すからな。同じ系統の力を操る妖狐の一族ならば、より大きい妖力を持つ者が勝つのは道理だ。
「まあ、負ける気はせぬがな」
幻狐は幻に惑わされなければ少し素早く力が強いだけの狐さんだ。俺が対処出来るのは既にやってみせた通りだ。
そして、舞ならば慣性制御で動きを止めれば幻狐は何も出来ない。幻を慣性制御で止められるかは不明だが、本体の攻撃を受けないのなら問題ない。
アーシャはその千里眼で即座に本物を見分けるだろう。攻撃してくる本体が分かればクマさんヌイグルミによる防御で完封出来る。
これ、幻狐さんが弱いのではなくこの三人がチートすぎるからだよね。幻狐さん、ご愁傷さまです。




