第八百八十九話
一時間程後に関中佐からの着信で伝えられたのは、攻略続行の決定だった。軍上層部はこのまま大宮ダンジョンを完全攻略する事にしたらしい。
「あれだけ派手に攻略のセレモニーを行なっておいて、難易度高いので別のダンジョンにしますとは言えないという判断です」
「そうじゃな。もし変更するとして、誰が矢面に立つのかという問題もあるのぅ。当然ながら妾も御免被るわ」
ダンジョンを変更する事により今受ける批難と、後に難易度が高いダンジョンが選ばれた事により受ける批難。どちらを取るかという選択でもあるのだ。
軍上層部は後に受ける批難を選んだ。批難されても、攻略するまで難易度なんて分からないのだから仕方ないだろうという反論が出来るしね。
フィールドは完全にランダムなのだから、その階層に潜ってみるまで予測すら出来ない。フィールドの種類は出揃ってきたように思われていたが、それもこの大宮で覆る事になったのだ。
という訳で関中佐との通話を終えて二十二階層を目指すべくダンジョンに戻る・・・前に尻尾をモフる舞とアーシャを引き剥がす。
「ビデオ通話じゃったから二人も映っていた筈なのじゃがのぅ。中佐からのツッコミが入ると思っておったのじゃが・・・」
そこは見事にスルーされたな。触らぬ神に祟りなしという事だろうか。俺は神ではなく半神なのだけどね。
取り敢えず、気を取り直してやるべき事をやってしまおう。アーシャが書いてくれた地図を確認し、二十二階層への渦への行き方を頭に叩き込む。
道順を覚えたら空歩を発動し、頭を天井にぶつけない高さを保つ。これは駆け抜ける際に地面の凹凸に足を取られて転倒するのを防ぐ為だ。
そして俺の前に影兎を焼滅させるよう設定した神炎さんを三発保持すれば準備完了。後は一気に駆け抜けるだけの簡単なお仕事です。
前に配置した神炎さんの光で全ての影は俺から遠ざかる方向に出来る。なので影兎が出てきても距離が開く為襲われる前に駆け抜ける事が可能。
最も近い位置に出来る俺自身の影も、神炎さんという光源が前にあるので後方に長く出来る事になる。そこから影兎が飛び出しても、後方から追いすがる形になるから振り切れるのだ。
「次の階層のモンスターは・・・ビッグトードじゃったな。楽なフィールドなら助かるのじゃが」
アーシャが示した場所にあった渦に飛び込み、無事二十二階層に到着した。祈りが天に通じたのか、二十二階層は草原だった。これならば空歩で上空を駆け抜けるだけで済む。
「まずはモンスターの確認と試練対策の為に一匹は倒さんとな」
出現したモンスターは通常通りビッグトードで、攻撃も変わった所はない普通のビッグトードだった。
「それが当たり前な筈なのじゃが、このダンジョンじゃと安心感を感じるのぅ」
フィールドもモンスターも普通で、普通の脅威度な階層。それがこんなに安心出来るとは。
「玉藻お姉ちゃん、ダンジョンの二十台の階層って来れる人は少ない危険な場所だからね?」
迷い家に舞とアーシャを呼びに行き二十二階層の状態を説明すると、舞に説教されました。はい、反省しますからモフらないで下さい。




