第八百八十七話
「舞、アーシャ。後で呼びに行く故迷い家で待っていて欲しいのじゃ」
「えっ、このまま一緒に行ったらダメなの?」
小首を傾げ、じっと俺を見る舞。気持ちが揺れるが、ここで妥協は出来ない。心を鬼にして断る事にする。
「ダメじゃ。恐らく無いじゃろうと思うのじゃが、次の階層のモンスターがレアという可能性もあるのじゃ」
「でも玉藻お姉ちゃん、ここは二種類もレアモンスターか出ているのよ?」
「複数のレアが出るのは珍しい。既に三階層と十八階層でレアが出ておる以上、またレアが出る可能性は低いじゃろう」
レアモンスターが出現する階層を抱えるダンジョンの方が少ないのだ。その上二種類のレアモンスターが出るダンジョンなんて、日本にいくつあるのやら。
なので一つのダンジョンで三種類のレアモンスターが出る可能性は極めて低いと言わざるを得ない。だが、その可能性がゼロであると断言出来るのは全ての階層のモンスターを確認し終わった後なのだ。
「舞ちゃん、玉藻お姉さんを困らせては・・・」
「アーシャちゃんにもそう言われたら引くしかないかぁ」
渋々迷い家で待機する事に納得してくれたが、就寝前の尻尾モフモフタイム延長を交換条件にされてしまった。
アーシャさんや、さっきは迷い家での待機に賛成していた筈なのに舞の味方をしてモフモフタイム延長に加担したのは何故なのかな?
ともあれ、二人が迷い家に入ったので入り口を消して渦に入る。触手に絡みつかれてどこかの階層に・・・なんて事はなく普通に転移する事が出来た。
「洞窟ステージとは、また厄介なフィールドじゃのぅ」
あちこちに岩や石筍がある為、影兎が利用できる影がそこかしこに存在している。なんて言っている側から石筍の影から飛び出した影兎が襲ってきた。
「捕まえてモフっている間に影に逃げられたら厄介じゃな」
体当りしてきた影兎を躱し、すれ違いざま鉄扇を取り出して首をはねる。よくファンタジー系やVRMMOものの小説に首刈り兎が登場するけど、たまには首刈り狐が居ても良いと思う。
兎は良くて狐はダメなんて、差別を許さない今の世には合っていない。今は多様性の時代なのだ。という訳で、狐巫女が首刈りしても良いよね。
舞とアーシャを呼ぶ前に付近に居る影兎を狩っておく。どれだけの影兎がいるのか定かではない上影に潜む兎は察知出来ない。なので狩っても完全に安全とは言えないが、襲われる可能性は低くなるだろう。
「二十一階層は影兎じゃった。じゃが、フィールドが洞窟故、あちこちに影があり難易度が高くなっておる」
「お姉ちゃん、十八階層といい二十一階層といい、このダンジョン殺意高すぎじゃない?」
「妾が作った訳では無いのじゃ。妾に言われても困るのぅ」
フィールドはランダムだから、ダンジョンさんに苦情を言ってもどうしようもないだろう。いや、試しに最下層でアナウンスしてくる存在に苦情を言ってみるかな。




