第八百八十三話
さて、今日から大宮ダンジョン再挑戦。軍差し回しの車で大宮ギルドに送ってもらった俺と舞、アーシャは目立たぬよう受付に向かった。
尚、今日の格好は以前使ったパーカーに伊達メガネという出で立ちである。前回あれだけ仰々しくダンジョンに入っておいて出直すなんて格好悪すぎるので、今回はひっそりと入る。
「すいません、ギルド長に伝言をお願いしたいのですが」
「ギルド長に、ですか?失礼ですがどちら様で・・・」
再挑戦する事をギルド長には伝えておくべきだと思い、受付嬢さんに伝言を頼んだ。また入るよと言うだけなので、面会して伝える必要はないだろう。
「俺の名を告げて再挑戦すると伝えて下さい。恐らくそれで伝わります」
「たきも・・・し、失礼しました!」
提示したギルドカードを胡乱な目で見た受付嬢は、滝本優という名を見て玉藻だと分かったようだ。少々声が大きかったので、他の職員さんや探索者達の注目を集めてしまっている。
「それでは伝言をお願いしますね」
俺達は面倒が起きる前に受付を離れダンジョンに入る。玉藻になって空歩で駆け抜けたい所だが、ここは三階層に人が多い。なので四階層までこのまま進む事にした。
「ここがお兄ちゃんが冤罪をかけられたダンジョンなのね」
「舞ちゃん、冤罪って何があったの?」
懐かしいな。ここで黄金虫横取り疑惑をかけられたのがかなり昔の事に思えてしまう。舞はあの事件を知らないアーシャに走りながら説明している。
「そんな事があったのですね」
「その黄金虫のせいで次の三階層には一攫千金狙いの探索者が多いんだ。民度が低い輩も居るから気を付けて」
俺達は舞が説明している間に二階層を走っていた。すぐに三階層への渦が見えてくる。そこに飛び込み四階層への最短距離を突き進む。
「くそっ、こんなに探してるのに黄金虫が出て来ない!」
「お前なぁ、滅多に出て来ないから金になるんだろうが。文句言ってないでキリキリ探せ!」
時折飛んでくる黒鉄虫を叩き落とし、四階層への渦に飛び込む。五階層への最短ルートから少し外れて玉藻になり迷い家への入り口を開ける。
「ここから先は妾が空歩で駆け抜ける故、二人は迷い家で待機するのじゃ」
「玉藻お姉ちゃんならば心配ないと思うけど、何かあったらすぐに呼びに来てね」
大人しく迷い家に入る舞とアーシャ。初見の階層ならば不測の事態が起きる可能性もあるが、二十階層までは一度走破しているのだ。下手を打つような真似はしない。
戦闘を避けてひたすら次の階層への渦へと飛び込む。舞とアーシャの新学期に間に合うよう戻るという制限があるので、今回はお肉の補充も迷い猫でのモフモフもせずに進む事を優先した。
途中昼休憩を挟んで走る。しかし十八階層でそれは起きた。先を進むパーティーに出くわしてしまったのだ。
「くそっ、刃が滑ってダメージが入らねえ。魔法はどうした!」
「だから、もう撃てないって言ったでしょう!あんたらで何とかしてよ!」
どうやらパーティーの魔法担当の魔法力が尽きてしまったようだ。避けて通りたいけど、ここは迷宮フィールドで十九階層への渦はあのパーティーの向こう側。これはどうしようかね。




