第八百八十一話
走りながら関中佐にメールで情報部に顔を出す事を伝える。了承し部長室にて待つ旨返答が来た。前触れもなく戻ると言われて驚いているだろうな。
「えっ、あれ?神使様、だよな?」
「空から降ってくる狐耳尻尾装備の巫女さんなんて、神使様以外に居ないだろ」
市ヶ谷本営の敷地内に着地すると、居合わせた軍人さんが驚きを露わにする。そりゃ、大宮ダンジョン攻略中の筈の俺がいきなり現れれば驚くよな。
「玉藻様?ダンジョンで異常事態でも?」
「異常事態と言えば異常事態じゃな。新種のモンスターがおったのじゃ。それがちと特殊でな。中佐に報告する故、後ほど伝えられるじゃろう」
驚かれたのは情報部でも同様だが、先輩方はダンジョンで何かあったとすぐに推測してきた。説明するのは吝かではないが、まずは上司である関中佐への報告が先だ。
「済まぬのう中佐、少々時間を貰うぞえ」
「書類仕事など後で構いません。そんな仕事より神使様の報告を聞く方が優先です」
応接セットに座り、出された茶を飲みながら二十階層での出来事を話す。一部簡略化して話したが、必要ない部分まで詳細に話すのは余計な時間を食うだけだ。
「面白い特性を持つモンスターですね。上手く使えば攻略の手助けになりそうです」
「二十階層から一気に一階層まで戻れるというのは大きいの。設定変更すれば意味なくなるが、他のダンジョンで探す価値はあると思うのじゃ」
擬態したモンスターは自分から動かないと思われる。なので奴が出る階層はキャンプを設営するのに都合が良い。
こちらが動かなければ襲われない上、新たにポップしたらそれまで無かった物が増える事になるので気付きやすい。
そこの前後の階層で狩りをして、地上に戻る時は偽物の渦に飛び込めば良いのだ。こいつが固定モンスターだったらダンジョン攻略の難易度は格段に下がっていただろう。
「広大なフィールドに遺跡の建物、見た目では区別がつかない偽物の渦まであるのでは本物を探すのは時間がかかりそうですな」
「うむ。なのですぐに戻るより春休みを待ちアーシャの力を借りる方が早いと妾は思うておる。アーシャの了承と宮内省の了承が必要じゃがな」
とは言うものの、アーシャが拒否するとは微塵も思っていない。そしてアーシャが来るなら舞も共に来るだろう。
両親とニックは、仕事の都合がつくかどうかだな。ニックも公務を増やされたし、両親も診察を望む者は多いだろう。
「偽の渦で即地上に戻れるので、宮内省の説得も難しくないでしょう。そこはお任せ下さい」
「手数じゃが頼む。再度潜るまで妾が為すべき事はあるかのう?」
「元々大宮にかかりきりの予定でしたから、特に仕事はありません。ダンジョン攻略に向けてゆるりと英気を養われますよう」
全てを関中佐に任せきりになるので心苦しいが、俺が下手に手出しすると却って邪魔になる可能性がある。ここは中佐の言葉に従い休養させてもらうとするか。




