第八百七十九話
「おい、あれ!」
「神使様、だよな。ここの攻略やってる筈じゃないのか?」
最下層目指している筈の俺が姿を見せた事で、ギルドに居合わせた探索者や職員の注目が集まる。俺はそれらを無視して近くにいる職員に話しかけた。
「済まぬな、ギルド長か副ギルド長に話したい事があるのじゃが」
「はっ、はいぃっ!ギルド長の部屋にご案内致します!」
声をかけた男性職員は踵を返してギルド長の部屋に俺を案内しようとした。確認もせずに連れて行こうとしたのでついツッコミを入れてしまう。
「ギルド長の都合を確認せんで良いのかのぅ?」
「神使様との会談以上の仕事などありません。つべこべ言うようならぶん殴ってやります」
ここのギルドでは職員に対してどのような教育を施しているのだろう。対話ではなく拳で語るのがここの基本なのだろうか。
「ギルド長、神使様がお話があるとの事なのでお連れしました!」
「お前、開ける前にノックぐらいしろや。と言うか、最下層に向かった筈の神使様が何でここに居るので?」
半ば混乱しながらも内線でお茶と茶菓子を二人分持ってくるように連絡を入れるギルド長。ここは最上級の玉露なんて用意してるのか。
「ともあれおかけ下さい神使様。すぐにお茶をお持ちします。で、お前は何故そこにいる?」
応接セットのソファーを勧められたので座る。するとここに案内してくれた職員さんが俺の後ろで控えるような位置取りをした。
「ギルド長が神使様を襲った場合取り押さえる為です」
「そんな畏れ多い事出来るかっ!大体、お前よりも神使様の方が強いだろうに!」
ここのギルド長、職員が心配する程女癖が悪いのかな?ちょっと関中佐に注進する必要があるかもしれないな。
「神使様、誤解です!私はそんな事絶対にしませんからね。お前が悪巫山戯するから誤解されたじゃないか。もう仕事に戻りなさい」
残念そうに退室する男性職員と入れ替わるように女性職員さんがお茶とお茶菓子を持ってきてくれた。彼女は俺とギルド長に配膳すると俺の後ろに立つ。
「・・・で、何故戻らない?」
「神使様の御用があれば賜る為です。ギルド長より同性である私の方が頼みやすい事もあるかと」
これは純粋な好意で残っていると思って良いのかな?元は男だという正論を言うのは憚られる状況だな。
「いいから下がりなさい。何か用があれば内線で呼ぶから」
女性職員さんは俺に深く一礼すると素直に退室していった。ギルド長さん、部下の扱いに苦労しているのでは?
「見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ありません。普段は優秀な部下達なのですが、神使様の来訪に舞い上がっているようです」
「二人とも妾に対する親切心からの行動じゃろう。故に不快には思うておらぬ。して、妾が地上に戻った理由なのじゃが・・・」
俺はお茶で喉を湿らせてから二十階層に降りた後の事を話した。宝箱モドキに食われかけた所は割愛しておいたけど、特に問題無いよね。




