第八百七十八話
宝箱に擬態するモンスター。某国民的RPGや長命なエルフのアニメで有名だが、まさか自分がそれに遭遇するとは思わなかった。
強さや倒した際のドロップなど調べたい事は山程あるが、完全攻略すれば階層指定で簡単にここに来れるようになる。今は調査より進む事を優先するべきだろう。
心機一転、迷い家を出て付近にモンスターが居ない事を確認する。何も無かった場所に宝箱が出現していれば目立つので、見落とす事は無いだろう。
見回したがモンスターは湧いていないようだ。二十一階層に進むため見つけておいた渦へと足を運ぶ。
「なっ、これは宝箱モドキの触手!まさかこいつも擬態モンスターじゃったのか!」
渦に入ろうとした俺を宝箱モドキの物と同じと思われる触手が襲い絡みつく。油断していた俺は見事に囚われ引きずり込まれた。
神炎さんで撃破を、と思った瞬間だった。普通に渦に入った時のような浮遊感を感じ、俺は触手から解き放たれた。
「なっ、こ、ここは何処なのじゃ?」
先程まで見えていた遺跡は影も形も見えない。明らかに別の階層へと移動させられている。ここが二十一階層なのだろうか。
現状確認は大事だが、まず全身に付着した粘液を神炎さんで焼き尽くす。今回の探索でも神炎そんは大活躍だ。
「えっ、もしかして神使様ですか?どうしてこんな所に!」
人の声に振り向くと、軽装に身を固めた若い探索者のパーティーが立っていた。ここは浅い階層なのだろうか。
「すまぬ、ここは何階層なのか教えてもらえぬか?」
「ここは一階層です。玉藻様、何故こんな所に?」
「新種と思われるモンスターにやられてのぅ。すまんが軍からの発表まで詳しく話せぬのじゃ」
三階層まで潜るというパーティーと別れ、俺は地上に戻る事にした。また二十階層に行ってあの遺跡から正解の渦を探すのは面倒すぎる。
なにせ、見た目で本物の渦と変わらない偽物の渦が存在する上に偽物に引っかかったらまた一階層からやり直しだ。
しかし迂闊だった。冷静に考えれば、宝箱モドキなんてモンスターはダンジョンに居るはずがないモンスターなのだ。
宝箱はこちらの世界の神がやらかした結果出現する事となった。なので、ダンジョンが生み出された世界では出現しなかった代物だ。
つまり、あちらの世界に存在しなかった物体に擬態するモンスターが生み出されている筈がないのだ。しかしそれは存在していた。
これが示すのは、あのモンスターは宝箱に擬態するのではなくその階層に存在する物体に擬態する能力があるという事だ。
恐らくだが、俺が気付かなかったたけで柱や壁に擬態したモンスターも居た筈だ。地上を歩けばそれらに擬態したモンスターに襲われていたのだろうが、空歩で空を移動した為襲われなかったのだろう。
「宝箱の中身がハズレの紙だったり、二十一階層ではなく一階層に戻されたのは完全にコピー出来ぬ故じゃろうな」
本物に劣る性能でしか擬態出来ない為、中身がハズレになったり次の階層ではなく一階層に戻されたりしたのだろう。
二十階層は一般の探索者でも辿り着ける。これはここのギルドにも情報を流しておく必要がありそうだな。




