第八百七十六話
得たばかりの鶏肉を使った竜田揚げで夕食をとる。宇迦之御魂神様に奉納した際、他国の者に粗相されたと嘆いておられた。
何でも他国の者が竹林に落書きを書いて回ったそうだ。穢れを齎し神威を落とそうとする妨害行為だと思われ、世間では海軍と外務省への非難が殺到しているそうだ。
他国からの入国を管理しているのは外務省なのだ。入国時の審査をもっと厳格にするべきだとの声があちこちから上がっているらしい。
そして海軍が糾弾されている理由は、犯人は密入国者ではないかとの噂があるからだ。日本は島国である為、海を越えて入国する以外方法はない。
そんな連中を取り締まるのは海軍の役目である。それが疎かになり、実害が出たとなれば非難されるのは当然だろう。
密入国説はあくまで噂であり、根拠は薄く証拠もない。しかし、海軍が起こした事件やそれによる弱体化は噂を否定する力を弱めてしまっている。
海軍に移籍した緒方准将はさぞ苦労しているだろうが、これも運命と割り切って乗り越えてもらいたい。地上に戻ったらエナドリでも差し入れしようかな。
地上の喧騒は置いておき、俺は俺が為すべき仕事を熟すとしよう。まず俺がやるべきは鶏肉の補充・・・じゃなかった、二十階層に降りる渦の探索だ。
荒野フィールドなので空歩が使え、見通しも良いので探しやすいのは助かる。しかし俺から見通しが良いという事は、夫婦鶏から発見されやすいという事でもある。
高度を上げれば振り切れるが、追われてしまいトレイン状態になってしまう。森林フィールドならば枝葉でこちらを見失ってくれるのだが、荒野では遮蔽物が無いのだ。
「他の探索者はおらぬと思うが、万が一おったら不味い事になるのぅ」
公式にはこのダンジョンで十九階層に到達したパーティーは居ない事になっている。しかし、たまたま十八階層を抜けてきたパーティーが居るかも知れない。
それに、トレイン状態になったのが引き金となり氾濫が起きるかも知れない。そんな危険を冒すならば、少々時間を割いてでも殲滅する方が良いだろう。
「・・・という理由で仕方なく殲滅しておるのじゃ、鶏肉を確保したいからでも捕獲してモフる為でもないのじゃ」
雌鶏を捕獲してスベスベな羽毛をモフる俺に執拗に攻撃を繰り返す雄鶏をいなしながら、ついつい言い訳をしてしまう。
尚、二十階層への渦は無事昼過ぎに発見出来た。次のブロンズゴーレムは流石にモフれない。とっとと渦を見つけて通過しよう。
「むぅ、これは面倒じゃのぅ」
渦を抜けた先、二十階層は廃墟ステージとなっていた。ダンジョンが作られた世界の都市が崩壊した後という設定なのだろう。
学者なら異世界の文明を知る資料でもあるので小躍りして喜ぶのだろうが、俺にとっては面倒なだけである。
「屋外にあれば空からの探索で見つかるが、屋内だと億劫じゃな」
渦が屋外にある事を祈りつつ空歩で空からの探索を始める。廃墟はかなりの広さがある。この廃墟の建物一軒一軒中を探索するなんて考えたくもない。




