第八百七十四話
少々予定外の出来事があったものの、渦を抜けて十階層に進出する。ここで少し時間を使いお肉の補充を行なった。
次の十一階層でもお肉の補充を行い、今日は十二階層に進む渦の手前で野営する事となった。と言っても泊まるのは迷い家なので、野営と言って良いのかどうかは迷うところ。
今晩のメニューはオーク肉を使ったトンカツと豚汁の豚肉メニューだ。玉ねぎと人参は迷い家の畑産。牛蒡は冬山から掘ってきた物を使用した。
「宇迦之御魂神様、今回は妾単独でのダンジョン攻略故、暫く妾の手料理となります。母さんの物より味が落ちますが、どうかご容赦を」
宇迦之御魂神様に奉納した際に事情を説明しておく。母さんの料理と俺の料理を比べれば俺の料理の方が不味いからね。
『そなたの料理も美味故案ずる事はない。それにのう、この料理にも妾を思うてくれる気持ちが籠もっておる故心地よい』
「ありがとう御座います。それと、宮内省より宇迦之御魂神様に奉納するお酒を預かっております。纏めて奉納しますか?何度かに分けて奉納しますか?」
『手数じゃが一度に一本奉納してくれぬか、こちらに置くと他の神に呑まれそうでのぅ』
京都は神社仏閣が多い。常駐している神仏も多いのだろう。そんな方達が宇迦之御魂神様の所に訪れる機会もあるのだろうな。
「畏まりました。取り敢えずこちらをお納め下さい」
用意しておいたお酒を一本奉納し、残りを家屋に持ち帰る。ここに置いておけば楽だが、日本酒は冷暗所に保管しないと変質してしまう。
奉納を終えたので自分の分のトンカツを揚げる。前世のラノベのような時間停止付きアイテムボックスでもあれば一度に揚げてしまうのだが、この世界にそんな便利な物は存在しないからね。
「・・・こんなに静かなのも久々じゃのぅ」
以前は一人でダンジョン攻略するのが当たり前だった。しかし三人娘が同行するようになり、入れ替わるように舞とアーシャが同行するようになった。
非戦闘要員である父さんと母さん、ニックまで居て賑やかな攻略になっていたからなぁ。単独での攻略なんて前回水中ダンジョンに潜った時以来か。
食事を終えて風呂に入り、尻尾のお手入れを入念に行う。これを自分でやるのも久しぶりだ。いつも母さんと舞、アーシャの三人がやっているからね。
そしてそれを羨ましそうに眺める父さんとニック。二人とも俺の尻尾をモフりたいようだけど、女性陣のブロックが固いからなぁ。
寝る前に関中佐宛に今日の進捗をメールで報告しておいた。中佐からは無理せず俺のペースで進んで欲しいと俺を気遣うお言葉が。
明日は十二階層から先に進めるだけ進んで行く予定だ。まだマップがあるので停滞する事は無いだろう。お肉の補充もしたし、足を止める理由は無い。
問題は未踏破階層だ。次の階層への渦が順当に見つかるかと、レアモンスターが存在するかが三十九階層到達までの時間を左右する。
レアモンスターなんてそうそう居ないだろうけど、厄介な奴が出てきたりしなければ良いな。




