第八百六十五話
さて、攻略するダンジョンが決まったので早速潜って攻略を・・・という訳にはいかなかった。大宮から攻略すると伝えられてから二週間、俺は足止めを食らう事になった。
大宮のダンジョンを攻略するにあたり、久しく訪れていなかった氷川神社の素戔嗚尊様にご挨拶をしようと思ったのだ。
すると、それを聞きつけた陸軍と宮内省が公式な参拝にするべきではと言い出した。国として感謝の意を正式に素戔嗚尊様にお伝えいただきたいと頼まれれば嫌とは言えない。
神の使いが公式な国からの謝意を御祭神に奏上するとなれば神社側も相応の対応が必要となる。二週間の準備期間で全ての段取りを済ませたのはかなり早い方だろう。
当日の朝、宮内省差し回しの高級車が迎賓館まで迎えに来てくれた。前後を陸軍の車両が護衛の為に囲っている。
その様子をマスコミ達がカメラを構え中継しているが、以前とは比較にならない程に大人しい。流石に先の懲罰が効いたのだろう。
迎えの車から白衣と白い袴を着た神職の方が降りてきた。真っ白な袴にはよく見ると白い文様が縫い込まれている。
「宇迦之御魂神様の意を受けし尊き御方を当神社にお迎え出来る事、至上の喜びに御座います」
「宮司殿自らのお迎え痛み入る。お社までの案内、頼むぞえ」
宮司殿のエスコートを受け宮内省の車に乗り込む。その様子をくまなく撮影しているマスコミは静かなものだ。
以前ならばレポーターが大声で様子を説明していたり、俺や宮司殿からコメントを取ろうとしていただろう。
「宮司殿、騒がせてしまい済まぬな」
「玉藻様、こうなるのが普通で御座います。以前のようにお忍びでお出で頂く方が稀ですぞ」
以前一人で氷川神社に参拝し素戔嗚尊様の神域に招かれた際、戻った所を神社の神職の人に見つかっていた。それは公表されなかったが、宮司殿に報告はされていたのだろう。
車は通行を止められて一般の車両が居ない首都高速道路を走る。新都心西のインターチェンジで高速を降りた車列は国鉄の線路をくぐり東口に出た。
「随分と人が多いのぅ」
「神使様が正式に神の御下を訪れなさる。それを一目見たいと思うのは当然に御座います故」
沿道を埋める人々は、姿が見えないだろう俺に向かって手を振っている。車窓を開けて応えたい所だが、安全保障上それは叶わない。
勝手にそんな真似をして狙撃でもされようものなら、宮内省や陸軍にどれだけの影響が出てしまう事か。
車列は旧中山道を右折した。氷川神社に行くには左折するべきなのだが、ここは敢えて遠回りするコースが選択された。
「何度見ても見事な鳥居じゃな」
旧中山道と氷川神社への参道の分岐に建てられている大鳥居。車列はそれを潜って進んでいく。参道に途中から入るのを避けたのだ。
そして県道二号線との交差点に到着した。ここからは車両は通れない為歩いて移動する事になる。封鎖された交差点で俺と宮司殿は車を降りた。




