第八百五十九話
「して、本題はどれだけ厄介なのじゃ?」
「玉藻様は話が早いから助かります」
網の上で焼く為のウニを取りに関中佐と岩場に向かった俺は、周囲に誰も居ない事を確認して関中佐に問う。この人の事だからただサボりに来た訳ではないだろうと思ったが大正解だった。
「玉藻様に確認していただきたいスキル持ちが居ます」
「スキルの確認かえ?妾ではなく父さんの方が良いと思うのじゃが」
人の状態を診るのは父さんの十八番だ。俺は誰かを見極めるようなスキルなんて持っていない。
「その人物のスキルは、時間停止なのです」
「なっ、時間停止じゃと!」
大体の物語において最強クラスの能力とされる時間停止能力。こちらが何も出来ない上に知覚も出来ない状態で相手に好き勝手されるのだから、それを破るのは難しい。
「厳密に言えば違うのですが、起きた現象から判断するとそれが最も近い表現になるのです」
そのスキルの持ち主は若い女性で、これまでは大した事のない能力だと捨て置かれていたそうだ。しかし例の呪術事件でスキルに対する見直しが為され、その結果見出される事となったようだ。
「スキル名は寒風で、体感温度を少し下げる程度のスキルだと思われていたそうです」
「真夏に重宝しそうなスキルじゃな」
使い方次第で面白くなりそうなスキルだが、時間停止とは全く関係無さそうなスキルに思える。いや、待てよ。熱量は分子の動く早さで決まるのだったか。低温になれば分子の動きが鈍くなるなら、動きを止める事も可能だろうか。
理系に強かった訳では無いからその辺が曖昧だ。まあ、スキルは物理法則なんて超越するから気にする必要はないかもしれないな。
「うちの部員が体験した所、スキル発動の鍵となる言葉を聞いた瞬間意識がぶれたような感覚を覚えたそうです。そしてストップウォッチを作動させて再度スキルを使ってもらった所、次の瞬間に時間が一分ほど進んでいたと」
「例え一分でも、時を止められれば相手を倒すに十分な時間と言えるのぅ」
「はい。そこで神使様ならばそのスキルの正体を見破れるのではないかと思いまして」
玉藻は片足を神の領域に突っ込んだ存在だから、スキルを打ち破って見極める事が出来るかもしれない。もし俺まで時間を止められてしまうようなら、神使にも通用する強力なスキル持ちとして囲う理由になると。
どちらにしても俺がそのスキル持ちの検証をする事により利益となる。これは断る理由が無いな。元々断るつもりは無かったけど。
「兎も角、そのスキル保有者とは一度顔を合わせておいた方が良さそうじゃな。中佐、手間をかけるが手配を頼むぞえ」
スキルの持ち主は普通の一般人らしいが、今後も一般人のままでいるという保証は無い。スキルの応用法を知って悪用するかもしれないし、誰かに脅されて利用される可能性もある。
舞のスキルも時間を止められた状態で上手く機能するかは分からない。そのスキルの持ち主、出来るだけ早く陸軍で囲う方が良さそうだな。




