第八百五十八話
「戻ったぞ。見よ中佐、この舞茸をっ!」
「これは見事な株ですな」
両手に抱えた天然物の舞茸を関中佐に嬉しそうに見せる皇太子殿下。そんな殿下を笑顔で迎える関中佐は天ぷらの準備に追われている。
「こっちも大漁だぞ。見よ、この美味しそうなアジを!」
「いつもの事ながら、これだけ釣れると本当に面白いな」
魚が沢山入った魚籠を掲げているのは今上陛下とニックという皇帝コンビだ。二人がテーブルに魚籠を置くと、母さんが手際よく三枚におろしていく。
「お野菜も取ってきたよ」
「ナスとジャガイモ、サツマイモにピーマンも取ってきました」
畑から沢山の野菜が盛られた籠を持ってきたのは舞とアーシャの美少女コンビだ。何度も収穫を行っているので手慣れたものである。
「山菜も沢山採れましたわ。コゴミにゼンマイ、タラの芽にフキノトウも!」
春の山から山菜を山のように採ってきたのは皇后陛下だ。今日は迷い家にロイヤルファミリーが全員集合している。
ちなみに、山に入った皇太子殿下と皇后陛下には護衛が同行していたので安心してほしい。刺客の心配はなくても、迷い家の山には野生動物が生息している故の護衛だ。彼らはスマホを使いAIでキノコや山菜を判別する任務も負っていた。
「中佐、また副官殿から書類仕事が溜まっていると文句を言われるのではないかえ?」
詐欺事件で俺に同行した中佐は、帰った後後回しにしていた書類仕事が溜まっていた事で副官さんから盛大な雷を落とされてしまったのだ。
「その心配はありません。近衛師団から有能な少佐が出向して来ましたから、彼の手を借りて終わらせてあります」
「近衛師団からの出向、のぅ・・・」
今上陛下をジト目で見ると、バツが悪そうに顔を背ける今上陛下。これは予想が当たっていると見て良いだろうな。
海軍から陸軍に移籍した石川大尉は、近衛師団に少佐として迎え入れられた。しかしここで問題が発生した。彼を診断した父さんからスキルの使用にストップがかけられてしまったのだ。
魂が損傷している現状でスキルを使うと、損傷が悪化する可能性がある。なので完治するまでスキルを封印し、万全な状態にするべきだと陸軍上層部も同意した。
こうなると、石川少佐自身の戦闘力は近衛の任務に耐えられる物ではない為実務に就かせる訳にはいかない。なので書類仕事を行う事になっていた筈なのだが。
「石川少佐を情報部に出向させる見返りに今回の天ぷらパーティーが開催された、なんて事はあり得ぬよなぁ」
今上陛下と関中佐が一瞬震えたように見えたのは気の所為だろうか。二人とも顔を汗が伝っているけど、準備している天ぷら油が熱くなっているからかな?
「たっ、玉藻お姉ちゃん、難しいお話は食べてからにしようよ」
「そ、そうだな。今は揚げたての天ぷらを楽しむべきだ」
舞と父さんの必死なフォローが入る。ここは二人に免じて追及するのは止めておくとしようかな。




