第八百六十話
「神使様、ご不便をおかけします」
「先輩、今は一介の中尉です。そんな呼び方をされたらこれの効果が意味なくなりますよ」
先輩と共に高速鉄道を降りた俺は凝り固まった体をほぐす為に大きく伸びをした。ここから在来線で石巻という場所を目指す。
特殊なスキル持ちに会う事を決めた俺は、情報部の先輩と共にスキルの持ち主が住むという島に行く事になった。
対象者への接触は秘密裏に行われる。情報部が目をつけているとバレると先に確保しようとする組織が出てくる可能性が非常に高いからだ。
飛ぶ鳥を落とす勢いの陸軍。その立役者である情報部への注目度は高い。俺達を見張っている組織は官民問わず複数居るだろう。
その為、今回は軍の車両を使わず公的な移動手段を使っての移動を行なっている。追跡者とマスコミはレイスの布による隠蔽で撒いてきた。
ここから仙石線に乗り継ぎ一時間。太平洋に面する港町、石巻に到着した。ここで少し休憩して昼食をとる事にする。
「どこも営業してませんね」
「居酒屋のような店なのでしょう」
駅付近には良い雰囲気の看板が出ているお店があるのだが、軒並み営業時間が十五時や十六時からで今は営業していない。
「折角港町に来たのに、何で牛丼を・・・」
「まあまあ、夕食に期待しましょう」
結局、駅前にあった某ショッピングモール内のフードコートで昼食をとる事に。地元の美味しい料理は夕食までお預けである。
「くっ、まさかこんな事になろうとは!」
「これは待つしかないですね」
食事をとって目的地に渡る島へのフェリー乗り場に来てみれば、十二時三十分発の便が出た後だった。時刻表を見ると、次の便は十五時三十分。三時間近くの待ち時間が発生してしまった。
身分を明かして行動出来るなら漁船を徴発して渡るという手も取れる。それ以前に先輩を迷い家に入れて俺が空歩で海を渡るという手段もある。
しかし、今回は表立った動きを見せる訳にはいかない。目的地の人口は七十人足らず。観光客が多い島とはいえ、フェリーの時間外に訪れる者が居れば不審に思われるだろう。俺達は観光客として島を訪れ、観光客として帰っていかなければならないのだ。
「先輩、どうせなら空き時間に必要となるアイテムを用意しましょう」
「必要となるアイテム?何を買うつもりで?」
先輩も目的地の情報を取得している筈なのだが、知識として知っているだけなのでそこに溶け込む為の手段に思い至っていないのだろう。
「これです。あの島に渡るのならば、これは必需品ですよ」
昼食を食べたショッピングモールに戻り、それを売っている店に入る。俺が手に取ったのは、半生タイプの猫用おやつだ。
目的の人物が住む田代島は、前世では猫島として有名だった。それはこの世界でも変わらないようで、人口を超える猫ちゃん達が住み着いている。
「猫好きならば猫のおやつは必需品です。一緒にモフモフを堪能しましょう」
俺達は猫好きな観光客として島に渡るのだ。なので猫ちゃん達と戯れモフモフを堪能するのはカモフラージュの為である。そう、これは個人の欲ではなく任務の為の偽装なのだ。
対象者に会う所まで書けなかった・・・




