第八百四十八話
「なっ、なっ、何ですかこれ!」
迷い家に入った某テレビ局クルーの反応はテンプレ通りだったので割愛する。一通り説明し終わった後のクルー達はかなり疲れた様子であった。
「神使様、これ、公表して良い物なのでしょうか?」
「人も物もいくらでも好きな所に運べるなんて・・・帝国が混乱しますよ!」
迷い家の危険性を的確に把握し、警鐘を鳴らした事がこのクルー達がまともなマスコミだと再認識させてくれた。
「お主らを選んだ甲斐があったようじゃな。他の者達ならば嬉々として放送したじゃろうよ」
高視聴率間違いなしの爆弾ネタである。視聴率を追い求めるマスゴミならば何も考えずに垂れ流すだろう。
「神使様には、当面各地のダンジョン攻略を担当していただく所存だ。陸軍情報部としては他の業務をお頼みするつもりはない」
「最奥にある制御区画に入る事が出来れば、潜った事がある階層を選択し直接行けるよう設定を変えられるでな。妾以外の者達の攻略を進めダンジョン資源をより多く持ち帰る為にそれが優先されるのじゃよ」
関中佐の説明に補足を入れると、クルー達が固まった。原因は行き先選択だろう。それがあれば格段にダンジョン攻略が進むのだから当然の反応だ。
「それって画期的なんて言葉では済まない歴史的な偉業なのではないでしょうか?」
「おまけにどこの階層からでも直接地上に戻る事も可能になるらしいからな。正に偉業だ。金鵄勲章では足りない、とんでもない功績だよ」
クルーの呟きに関中佐が答えた。ちなみに、今上陛下と侍従長さんは別行動をしているのでこの場には居ない。
「この素材をうちだけが扱うのか・・・もういいや、持ち帰って上に判断してもらおう」
悩み抜いたクルー達は、考える事を放棄したようだ。こういう難しい判断をする為に上役というのは存在するのだから、正しい判断と言えるかもしれないな。
「玉藻様、そろそろ戻りませんと。マスコミ連中を放置しておりますからな」
「そうじゃな。間を繋ぐ工夫をしておるじゃろうが、流石に限界じゃろう。もう一度言うておく。ここで記録した内容をどう報じるかはそなたらの自由じゃ。普通に報じようと報じず封印しようと、妾は何も言わぬ」
報じないという選択をされた場合こちらの思惑から外れる事となるが、その可能性はほぼ無いと思っている。
「分かりました。しかし神使様、関中佐。我々は一部の情報を封印する事をここに誓います」
「一部の情報、じゃと?」
何を封じるのかと怪訝に思ったが、クルー達の視線を追って彼らの宣誓に納得した。
「陛下、もうお戻りになる時間です!一応式典の最中てすぞ!」
「まだシロキスとアジを釣っておらぬ。朕は釣りたてを天ぷらにしたいのだ!」
視線の先では、釣り竿と魚籠を持った陛下と侍従長さんが言い争いをしているのだった。
「・・・ここで撮影した情報の扱いは、そなたらに一任される。じゃが、そなたらの配慮には感謝するぞえ」
尚、陛下と侍従長さんの攻防は侍従長さんの勝利に終わった事だけを報告しておく。




