第八百四十七話
「侍従長、総務省にこ奴らを厳に罰するよう伝えてくれ。さて、折角の晴れの舞台だ。臣民に明るい話題も提供しよう。関中佐」
「はっ、我ら陸軍は神使様のお力によりダンジョン全四十階層を完全攻略した事をここに宣言致します」
関中佐によるダンジョン制覇の宣言は、集っているマスコミにここが御前である事を忘れさせる程のインパクトを持っていた。
「関中佐、それは本当ですか!」
「神使様のお力と言いましたが、どのようなスキルなのでしょうか!」
「控えよ!陛下の御前であるぞ!」
反射的に質問を投げかけたマスコミを侍従長さんが一喝して黙らせる。自分達がどこに居るのかを思い出したマスコミ達は顔を青くして黙り込んだ。
「詳しくは当事者から聞く方が良かろう。玉藻殿、頼みます」
「妾は元より宇迦之御魂神様よりダンジョン攻略の為この世に送り込まれた者じゃ。此度はその任を全うしたという訳じゃが・・・」
一旦言葉を切ってマスコミ達を見ると、身動ぎ一つせずに俺を注視していた。あまり焦らすのも酷なので、説明を続けるとしよう。
「妾は迷い家というスキルを持っておる。それは別の空間にある屋敷に出入りできるというスキルじゃ。これによりダンジョン内でも安全に休息出来るのじゃ」
言うべき内容は語ったのだが、マスコミは固まったままだ。まあ、口頭で説明しても理解は出来ないよな。
「陛下、ここで迷い家を出しても構わぬかの?」
「うむ、実際に見せた方が分かりやすいだろう」
陛下の許しが出たので迷い家の入り口を出現させた。このやり取りは予定通りなので、警備の衛士も反応しない。
「これが迷い家の入り口じゃ。ここには妾が許した者のみ入る事が可能なのじゃ。妾の許しなき者は人であろうとモンスターであろうと入る事は叶わぬ」
説明を聞いたマスコミ達は期待を籠めた目で俺を見る。迷い家の中を撮影したいのだろう。こちらもそのつもりなので、集まったマスコミの中で最もマシな一社を指名する。
「わ、我々ですか。神使様、うちは生中継ではありませんが本当によろしいのでしょうか?」
「迷い家を公表するのが目的じゃ。御蔵入りにせぬなら構わぬよ」
この局以外の全局は特番で受勲式を生中継しているが、ここだけは頑なに予定された番組を流している。確かこの時間はアニメだったかな?
公共放送も含めた全てのテレビ局のクルーがこの局のクルーを睨みつけているが、恨むならこれまで自分達がやってきた取材手法を恨むのだな。
「玉藻殿、朕も久々に訪れたいのだが」
「陛下を拒む理由はありませぬ。皆で参るとしましょうぞ」
という訳で某テレビ局のクルーと今上陛下、侍従長さんにニックとアーシャを連れて迷い家に入る。殿を関中佐が務め受勲会場にはマスゴミ達と衛士のみが残された。
式を中継していた番組では衛士しかいない会場の風景をひたすら流すという間抜けな事になっているだろうが、そこは各局で工夫してほしい。
視聴者からクレームの嵐になるかもしれないけど、頑張って乗り越えてくれ。健闘を祈る!




