第八百四十六話
「お前達がどのように軍の機密を入手したのか、じっくりと調べさせてもらう。お前達の周辺も含めて念入りにな」
「ひっ!う、嘘だったのです!ああ言えば目立てると思ってつい!」
黙り込んだ愚者達に関中佐が追撃をかけると、あっさりと嘘だったと認めだした。軽い気持ちでついた嘘が国家機密漏洩罪に発展するなんて思いもよらなかっただろうな。
「見苦しい、その者達を連行しなさい」
「ああ、少し待て。もう一つ聞きたい事がある」
侍従長さんの指示で衛士が自称親族や自称友人達を連れ出そうとしたが、陛下が待ったをかけた。
「式典に呼ぶにあたり宮内省が身元を調べたのだが・・・こんなアカウントが発掘されてな。この使えないハズレスキル持ちとは石川大尉の事なのか?」
陛下が懐から取り出した紙には、SNSの書き込みが印刷されていた。そこにはハズレスキルを授かったクラスメートに対する非道な仕打ちが赤裸々に書き込まれていた。
「そっ、それは・・・」
「虐めていた相手を祝おうとしていたとはどの口が言うのやら。朕の臣民にこんな恥知らずがいたとはな。それも含め厳罰に処す故覚悟いたせ!」
最後に石川大尉を虐めていた過去まで陛下に暴露され、絶望の表情で連行されていく自称友人達。色めき立ったマスコミが挙ってその表情を写している。
「さて、そこに並ぶ報道機関は彼らの盲言を電波に乗せて臣民に広めておったようだな」
偽りにて臣民を騙していた罪人を写していたマスコミが、その動きを止めた。自分達にまで火の粉が降り注ぐとは予想外だったのだろう。
「へ、陛下、我々も騙されていたのです。よもや我々を騙すとは夢にも思わず・・・」
「彼らの言の真偽は、少し調べれば簡単に裏取りが出来た筈。そなたらはそれすら行わなかったと言うのだな?」
陛下の下問にマスコミは答える事が出来なかった。イエスと答えれば自分達の怠慢が世に晒され、ノーの答えれば嘘と知りつつ視聴率を稼ぐ為に臣民を騙した事になる。
「答えられぬか。そなたらの会社も徹底的に調べる必要がありそうだな。管轄は総務省だったか」
「はい、総務省で御座います。陛下、最近の報道姿勢は目に余る所があります。総務省もお調べになる必要があるかと愚考致します」
陛下の疑問に侍従長さんが即答した。そしてマスコミだけでなく管轄省庁である総務省にも調査が必要だと上申した。
「公務を妨害するなどの法を逸脱した取材に加え、神使様に対する不敬は見逃せませぬ」
「そこまで酷い事になっておるのか。そこに民放だけでなく公営放送までおるのは情けないのぅ」
最前列に陣取るマスコミは、愚者達を起用して視聴率を稼いでいた放送局だ。そこには公営放送であるTHK中継班の姿もあった。
「居ないのは一社のみで御座いますな」
「一社だけでも残ったのは幸いと見るべきか、一社しか残らぬのを悲観するべきか・・・」
あの一社は大地震に大津波でも来ない限りマイペースを貫くからなぁ。あそこは今回の事で陛下の覚えがめでたくなるかもしれないね。




