第八百四十五話
「か、勘違いをしていたようです。軍の学校に入ったと聞きましたので、てっきり士官学校かと思い込んでしまいました」
「私もです。軍の学校といえば士官学校が真っ先に浮かんできますので・・・」
一人が言い訳をすると、他の者達もそれに便乗してきた。しかし陛下は更に質問を重ねて彼らの言質を集める。
「そうであったか。それはそうと、お前達は石川大尉を祝おうとしたと言っておったな。それは彼を祝う事が出来なかったと解釈して良いか?」
「はい、私は石川君の士官学校入学を祝おうとしたのですが、彼の両親が会わせてくれなかったのです」
自称親族が答えると、他の者達も首肯して自分達も同じだと主張する。ここで彼らの表情が僅かに緩んだのを俺は見逃さなかった。
石川大尉のご両親はこの場に招待されていない。マスコミの前に現れる事により今後の生活に支障が出ると判断された為だ。なのでこの場でそれの真偽を確認する事が出来ないのだ。
後程両親を脅して口裏を合わせるようにさせれば嘘が本当となる。それで辻褄が合い窮地を脱する事が出来ると思ったのだろう。
「真偽判定のスキル持ちがおる以上、嘘じゃとバレるのは避けられんのじゃがな」
「もっと早く断ずる事も出来よう。だが、それでは足りぬ程に怒っているのだよ。それは朕とて同じ事よ」
逃げる余地を残したまま、幻想の希望を持たせる陛下にため息つきつつぼやくと、ニックが陛下を擁護した。石川大尉はニックにとって窮地を救ってくれた恩人だ。その彼を貶める行為をした愚者達を許せないのだろう。
「関中佐、石川大尉の履歴はどうなっておる?」
「大尉は中学卒業後、東京市役所に就職し監査部に配属。タイ王国に派遣されている事になっています」
秘匿された諜報員養成学校に入学した者が、履歴にそれを記録される筈が無い。石川大尉も例に漏れず、軍の学校に入学したという記録は存在していなかったのだ。
「聞いての通り、石川大尉が軍の学校に進学したという記録は存在しない。では、そなたらはどうやってそれを知ったのか。朕に説明してくれるな?」
「そ、それは彼の両親です。彼の両親に軍の学校に入ったと聞いたのです!」
自称親族の一人が苦しい言い訳をすると、他の者達も口々に同じだと主張し始めた。こいつら、不敬な態度だと思わないのか?
「それはあり得ませんな。何故ならば、彼の両親も大尉が海軍にスカウトされた事を知らなかったのです。両親も東京市役所からタイ王国に単身赴任しているとあの事件まで信じていたのですよ」
人は自分が知らない内容を他人に教える事は出来ない。当たり前の事なのだが、それにより彼らの主張が嘘である事が判明してしまう。
「うっ、嘘だ!奴の両親が嘘をついている!」
「そうです、私は確かに彼の両親から聞いたのです!」
尚も嘘を重ねる愚者達に、とうとう陛下も嫌悪の表情を隠せなくなってきたようだ。僅かにその尊顔が歪んでしまう。
「では、宮内省付きの真贋判定スキル持ちを呼ぶとしよう。お前達がどう主張しようと自由だが、朕や臣民がどちらを信ずるか・・・」
ここで最終手段を出して終わらせる今上陛下。まだ断罪するべき者が居るので、これ以上時間をかけられないからね。
作者「くっ、誤って一話丸ごと消してしまったから間に合わなかった・・・」
玉藻「阿呆過ぎて庇う気にもなれんのぅ・・・」




