第八百四十四話
皇居内部の一室に多くのマスコミが詰めかけている。彼らの前には衛士が立ち並び、万全の警備体制を敷いていた。
最前列には自称親族や自称友人達が並び、彼らを登用したマスコミ達がその横で彼らの様子を逃さず撮影していた。
「石川大尉並びに関中佐、入室」
観音開きの重厚な扉が開かれ、緊張した面持ちの石川大尉と表情を消した関中佐が入室した。そして部屋の中央辺りで足を止めて膝をつく。
「今上陛下並びに神使様、皇帝陛下、皇女殿下がご入室されます」
二人の軍人が入って来た方向とは逆の位置にある扉からお盆を持った侍従長さんを先頭に今上陛下と俺、ニックとアーシャが部屋に入った。
集まっているマスコミも膝をついてやんごとなき面々を出迎える。その中に俺が居るというのは落ち着かないが、神の使徒を辞める訳にもいかない。
俺が混ざっているのは、万が一の事態に備える為だ。もしもの際は三人を迷い家に入れて安全を確保する事になっている。
勿論、マスコミ達は身元の確認と持ち物の確認をされている。危険物は持ち込まれていない筈だが、この世界にはスキルがある以上油断はできない。
「本日は厳島沖にて発生した駆逐艦はなかぜの反乱を解決に導いた石川大尉への論功を行うものである。石川大尉、御前へ」
膝をついていた石川大尉が立ち上がり、ギクシャクした動きで今上陛下の御前に進み出た。その様子は複数のカメラが捉え、日本全国に流されている。
「石川大尉はスキルを用いて駆逐艦はなかぜを撃沈。人質となっていた民間船への被害を最小限に抑えて事件を終息に導いた。この功に対し帝国は功五級金鵄勲章を授与する」
侍従長さんが口上を述べ、持参した盆を今上陛下に差し出した。陛下は盆に乗っていた勲章を手に取り石川大尉の正装に佩用された。
「そなたの活躍なくば、朕はかけがえのない友を失うやもしれなかった。大義であった」
「勿体ないお言葉、陛下より賜ったお言葉を一生の誇りとし精進して参ります」
石川大尉が深く頭を下げると同時に盛大な拍手が沸き起こり眩しいほどにカメラのフラッシュが焚かれた。
「さて、そこに並ぶ者達は大尉の親族や中学時代の同級生と聞いておるが相違ないか?」
陛下の御下問の対し自称親族や自称友人達は揃って首肯し間違いない旨の意思表示を行なった。そこに偽りは無い上、今上陛下に嘘をつく理由などありはしないのだ。
「そなたらはテレビにて大尉の過去を披露しておったとか。大尉が士官学校に合格した際と卒業し任官した際に祝おうとしたそうだな」
再度首肯する同級生達と親族達。テレビにてそう公言している以上、ここで違いますと否定する事など出来るはずもない。
「ふむ、諜報の任に就く者は士官学校に入学せぬと朕は記憶しておったが・・・関中佐よ、どうなのじゃ?」
「陛下、陸軍においては諜報の任に就く者は市ヶ谷にて学ぶ事はありませぬ。秘匿された教育機関にて専門の課程を履修する為です。それは海軍でも同じで御座います」
関中佐の返答に親族や同級生達の顔から血の気が引いていった。全国に生中継されている場で今上陛下により嘘を暴かれた。奴らはこれを乗り切れるかな?




