第八百三十八話
「妾は各地のダンジョンを攻略して回る事になるじゃろう。その際に・・・むっ、どうしたのじゃ?」
「あっ、申し訳ありません。何でもありません」
俺は話している最中大尉の顔が一瞬歪んだのを見逃さなかった。すぐに表情は戻ったし、本人も何でもないと言っている。
「中佐、大尉、一旦迷い家から出るぞえ」
いきなり迷い家から出ると言われ、少し戸惑う関中佐と石川大尉。しかし何も聞かず迷い家から退出してくれた。
「石川大尉、体調はどうじゃ?」
「・・・はい、少し楽になったような気がします」
先程何でもないと答えた手前体調が悪かった事を認める事に一瞬躊躇した石川大尉だったが、見抜かれていると観念したのか素直に答えてくれた。
「玉藻様、大尉はどうしたのでしょう」
「妾も確たる事は言えぬ。じゃが、原因に幾つかの心当たりはあるでな」
理由と思われる因子に心当たりはあるけれど、それのどれが原因なのかは証明出来ない。父さんが居たら診察してもらえたのにな。
「恐らく神気にあてられたのじゃろう。抑えていただいていたとはいえ、三柱の神々が顕現なされたのじゃ。神気の濃度は上がっておるじゃろう」
「神使様である玉藻様は兎も角、私が無事なのは何故でしょう?」
「慣れ、じゃろうな。関中佐は迷い家の残留神気や妾から漏れる神気を浴びておる。耐性ができておるのじゃろう」
俺の尻尾が増えて神気が上がった影響の可能性もある。抑えているつもりだが、総量が増えたので漏れる量も上がっているかもしれない。
「ときに石川大尉、これまでに何度もクジラのような大物を召喚しておったのかえ?」
「いえ、あれが初めてです。これまではライオンの成獣が最大でした」
それを試したのがいつかは知らないが、ライオンからクジラでは大きくなりすぎだ。
「大尉、かなりの無理をしたのじゃろう。今後はそのような無茶をしてはならぬ。関中佐、父さんに大尉を診察してもらうのじゃ。魂が傷ついている可能性があるでの」
士官学校での実習で魂の器が鍛えられていたというのもあるだろう。しかし、それだけでクジラを召喚出来る程の出力を得られたとは思えない。
「この後大尉を迎賓館に連れて行きましょう。しかし、ライオンを召喚出来るなら純粋に戦力として使えそうですな」
大尉が呼び出すライオンがダンジョンのモンスターに通用するかどうかは試してみないと分からない。しかし地上でなら強力な戦力になってくれるのは間違いないだろう。
「召喚を解除した際肉体が残らず消えておる故魔力でできておるのじゃろう。モンスターにも通用すると思うのじゃが、試した方が良さそうじゃな。大尉、ダンジョンのモンスターも召喚出来るのかえ?」
「ダンジョンモンスターは試した事がありません。しかし、見たことがあるモンスターならば召喚出来るような気がします」
もし出来るなら、大尉のスキルもとんでもないぶっ壊れスキルと言えるだろう。ゴーレムを召喚すれば頼れる壁役が誕生するのだ。
三十四階層の大亀を召喚出来たら無敵だけど、流石にあれを召喚するのは無理だろうな。




