最後の質問
「僕は楽しかった、ああいう話ってなかなか真面目に話さないし。」
山崎会長は素直にうなずく。
「よかったです。」
猫実さんは手を合わせて、喜んだ。
「進行がうまくいくか不安で…よく眠れなかったんです。」
「大丈夫ですか?」
巧は急に心配になったが、猫実さんは、
「巧さんに肩をもんでもらったので大丈夫です。」
と理屈じゃないことを言う。巧は安心して良いのかどうかわからない。
猫実さんが堂々と進行役をこなしていたので、緊張していたことを想像できなかった。
「もっと時間をとってゆっくり話したいなと思いました。」
日菊先輩は、控えめに意見を差し込んだ。
「お弁当を食べながらだと、ボールを回しにくいし、放課後に一時間ぐらい時間をとって、静かな教室でやるとかの方がいいかも。」
「な…なるほど。」
猫実さんは日菊先輩の意見に驚く。静かに考え尽くされたことを言われてしまった。
「確かに、ちょっと昼休みはやりづらかったかも…。」
と猫実さんがあごに手を当ててうつむく。
「放課後にやってみる価値はありそうですね。」
巧も考えれば日菊先輩の意見がもっともに思えてきた。
昼休みの方は騒がしく、巧にとっては声が聞き取りづらかった。それに、色々な人に見られながらだと、恥ずかしくて意見も言いにくい。
猫実さんはうなずいて、即座にスカートからメモ帳を出して、メモをした。
それから、日菊先輩はいくつか用意してきた質問をして、巧たちはそれに応えた。大変だったことを聞かれて、人助けではなく、二人でいろいろあったことが思い浮かぶのがおかしかった。
「最後にお助け部のこれからの目標を聞きたいと思います。」
日菊先輩は二人を少しづつ見た。巧は考える。猫実さんが巧の方をチラリとみる。
「これ、実はあんまり考えてないので、今それぞれ思いついたことでいいですか。」
「はい、では、一人づつ抱負を語ってくだされば。」
「僕は、もっとお助け部のために役立ちたいなと思いました。」
巧はずっと思っていたことが、口をついて出た。
「今まで、僕自身がお助け部と言うか、猫実さんに助けられていたので、今度は僕の方から何かしたいなと思います。」
「そうなんですね。」
日菊先輩は、巧の言葉の勢いを受け止めるようにうなずく。
「例えば、どんなふうに助けられたのですか。」
巧は、そう簡単に引出されてもいいのか、と一瞬戸惑ったが、言うことにした。
「僕は、学校の中でもあまり居場所がなかったんですけど、お助け部に入って、人のために何かをしようと思ってから変われた気がします。これからは文章を書くのが好きなので、それで何か役立てたらな、と思います。」
「そうなんですか、頑張ってください」
日菊先輩は、巧の言葉を書き留めてからそう言った。
「頑張って」
と山崎会長も言ってくれた。
「頑張ってください。」
と、なぜか猫実さんが一番大きな声で言った。
「あ、ありがとうございます。」
と巧はおずおずと引き下がる。
今度は猫実さんの番だ。三人の視線が集まる。
金子先生も、結局カメラを持ったまま、最後まで付き合うことにしたようだ。




