部活勧誘会
「うーんなんででしょう。」
猫実さんの応えは拍子抜けするほどあいまいだった。日菊さんはペンを構えたまま、猫実さんをじっと見つめた。しかし、猫実さんはポニーテールの先をつまんだりして、言葉を探している。
巧はただ猫実さんの様子に動じないように、じっと座っていた。わからない事は正直にわからないと言う人だ。
「なんとなく作ったんですよねぇ…。あ、最初、私が金子先生にボランティアがしたいって言ったんです。」
猫実さんが、カメラを構えている金子先生を見た。先生はすっと我に返り、うなずく。
「そうだったね。部活の勧誘会の時、ぽつんって立ってたから、声かけたんだよ。何部に入りたいの?って。」
日菊先輩のペンの動きが落ち着くのを見計らいながら、金子先生が続ける。
「そしたら、猫実さんが自分がやりたいことと言うより、してあげたいことがあるんですって言ってさ。あ、じゃああなたはここじゃないねって生徒会のブースに連れて行ったの。」
金子先生は、おかしそうに笑っている。にぎやかな部活勧誘会で、一人立ち尽くす猫実さん。そのころから異彩を放っていただろうと、巧は想像する。巧は、先輩たちが勧誘してくるのが怖くて、異彩を放つ暇もなく逃げようとした。が、なぜか会場の外で見張っていた演劇部の先輩につかまってしまった。「君なら才能あるよ。」と熱烈に誘われ、断ることができずに、一時間ぐらい話を聞いていた。気がついたら、勧誘会は終わっていた。
「そう言えば、猫実さんと初めて会ったのは、ブースだったね。」
と山崎会長がうなずく。
「はい、そうですね。その時はお世話になりました。」
猫実さんはペコリとおじぎをする。
「今年、ということは私もいたと思うけど…。」
日菊先輩は、あごに手をあてて考え込む。黒い目をぱちぱちさせて、記憶を探っている。
「あ、たぶんその時カメラを持って回ってたからだ。」
と一人で合点が入ったらしく、また普段の落ち着いた様子に戻る。




