考えなくても
山崎会長が手を挙げた。
「確かめる、と言っても普段はしないですよね。何かをしてあげた時、自然に嬉しくなるというか…、それは勝手に自分が喜んでいるだけ、と言われるとまだ納得できてない気が…」
「自分で役に立ったと思うことと、本当に役立つことはどう違うんでしょうね。」
猫実さんはさらに問いかける。
名前のわからない男子が手を挙げた。それを猫実さんがすかさず拾う。昨日のお助けカフェにも参加していた人だ。
「僕は、何かをする時、それが本当に役立つとかあまり考えていないです。ただ、それが良さそうだと思ったからするのであって…。人に対しても同じかもしれないですね。」
本当に役立つか考えていない。巧は自身を振り返ってみてもそうだ、と言えるかもしれないと思った。
「はい。」
日菊さんが手を挙げる。
だんだん慣れてきたようだ。
「私は、その考え方にちょっと疑問があります。私は、学校や生徒の役に立っていると思うから生徒会の役員をやっているんです。もし、役に立つかどうかわからなかったら、やらない方がいいと思うんですけど…。」
淡々とした言葉だった。しかし、内容は真っ向から対立している。
「うーん、そうですかねぇ…。他の方は、何かありますか。お二人の考えに共感できる方とか、それとは別の考えがある方は?」
猫実さんは全員に目を配る。巧は、猫実さんだったらどう言うのだろうと考えた。今は、進行役を務めているが、参加者としての猫実さんの意見を聞いてみたいと思った。
巧は手を挙げた。
「お、巧さんどうぞ。」
「さっきの、日菊さんの考えにはちょっとわからないことがあって。日菊さんはどうして、生徒会は役に立つと確信できたのか知りたいです。今までの日菊さんの立場からすると、役に立つか分からないまま、何かをすることを認めてもいい気がするんですけど。」
日菊さんや、番さんは、何が本当に役に立つかわからないと言う考えを提示した人たちだ。
日菊さんは、膝に手を当ててうつむく。巧は自分の発言が受け止められているのか、不安になった。
「どうですか、日菊さん以外でも、さっきの巧さんの意見に対して何かあれば…。」
猫実さんが言い終えると同時に、日菊さんの手が挙がった。
「私が言いたいのは、役に立つかどうかを考えずに何かをするのが嫌だ、と言うことですね。生徒会は広報とか、先輩たちの姿を見て、役に立っていると自分で考えたからやっているんです。本当にそうかと、聞かれたらわからないです。自分がそう考えただけ、と言われればそれまでなんです。」
日菊さんの話の筋を巧は確認した。それで、自分の質問で聞きたかったことがはっきりしたように思えた。
山崎会長が手をあげた。
ボールが渡される。
「あの、そろそろ山崎先輩で最後になりそうです。」
猫実さんが言う。
「あ、そう、もうそんな時間?」
と、驚きながら、会長はボールを受け取る。
「僕が言いたいのは、日菊は本当に役に立ってるよ、と言うことだったんだけど…それでいい?」
拍子抜けして、みんなはどっと笑った。終始無表情だった日菊さんも、少し照れたように笑った。
「あ、はい、ありがとうございます。日菊さんよかったですね。他に何か?」
「はい。」
番さんが、笑ったまま手を挙げた。
「じゃあ番さんで最後ですね。」
「はい、えっと、ウチが思ったのは、考えずにやるのもアリかなーって。役に立つかわからんけど、それでとりあえずやってみようって感じ。楽しいからいいじゃん?みたいな。役に立ったらラッキー、みたいな。おわり。」
番さんはニコリと笑って、肩を軽くすくめた。ともすれば、軽い会話のようだったが、今までの議論を踏まえると妙な説得力があった。




