どうすれば人の役に立てるか
「はじめの五分ぐらいはテーマを探したいんですけど。誰か考えたいことがある方いますか?」
猫実さんが視線を配る。皆、膝の上に弁当をのせて食べている。猫実さんはコミュニケーションボールをかざして、他の人の言葉を待った。
「はい。」
山崎会長が手をあげた。
「じゃあ、どうぞ。」
弁当を膝に乗せながらなので、投げるわけにはいかない。隣のひとから隣の人へと、ボールを回していく。ぎこちないがゆっくりと会話が始まる。
「えーと、僕は生徒会をやっているんですが、あんまり他の生徒に生徒会が何をやっているのか知られていないというのが悩みです。さて、どうしたらいいのか。」
巧は生徒会もお助け部と同じことで悩んでいるのだなと思った。
「なるほど。」
猫実さんが相槌を打つ。
「山崎先輩の考えは、どうやったら人に自分のやってることを伝えられるのだろうか、という問いですか。」
「うーん、そうかもしれない。」
「他に何か考えたいことがある方います? 同じことでも、違ってても構いません。」
「あ、はい。」
口を押さえながら番さんが手を上げる。
ボールがまた回される。
「私も、放送部で、よく考えます。どうやったら楽しい番組を作れるんだろうって。」
「私も、とおっしゃいましたけどどこが同じだと思いましたか。」
猫実さんは的確に話の要点をつかみにかかる。
「あの…。」
番さんは、首をかしげて言葉を探る。発言者ではない巧もつい手を止めて考えてしまう。早く食べ終えて、会話に集中したいとも思う。
「人と関わるところ? どうやったら喜んでもらえるか。」
番さんはやっと言葉にしてスッキリしたように顔をあげた。
「それをいうならお助け部もじゃない?」
番さんはコミュニケーションボールを猫実さんに向けてかざす。
「そ、そうですね、じゃあボールをください。」
番さんが隣の巧にボールを渡す。巧は猫実さんにボールを渡す。
「お助け部も人と関わる部活ですね。どうやったら人の役に立てるかということを考えています。」
猫実さんは少し考えて声を切り替えるように皆に呼びかけた。
「どうですか、今日のテーマはどうしたら人の役に立てるかとか、誰かを喜ばせられるか、にしませんか?」
皆がこくこくと、無言でうなずく。
「カフェでは一つのテーマに絞ることで、普通の雑談ではなく、深い対話をすることができる…のだそうです。」
猫実さんが、笑いながら指を立てて示した。
「では、それにしましょうか。今日のテーマはどうすれば人の役に立てるか、誰かを喜ばせられるか、です。」




