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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
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10分間の交渉術

 巧は夜桜先輩を見て、今はどんな小説を書いているのだろうか、と思う。自分の小説を読んでもらったり、アドバイスをもらったりすることはあるが、先輩の小説を読んだことはない。

 猫実さんの話を聞くと、中学生の頃から書いていたそうだ。しかし、何となく巧の方から見せてほしいと言い出せない。

 「巧も、久しぶりだね。」

 夜桜先輩は軽く口角を上げてほほえんだ。それだけで様になっている。

 「お久しぶりです。」

 巧もつい行儀よくお辞儀をする。

 「あの、お助けカフェというのを今やってて。」

 「うん、金子先生から聞いた。」

 夜桜先輩はもう知っていたらしい。

 「今日もやるんできてくれますか。」

 巧は嬉しくなって聞くと、

 「嫌だ。」

 と即答された。

 「人混みが苦手だから。」

 「それなら仕方ありませんね。」

 と猫実さんが同情する。 

 巧は出鼻をくじかれて、精神が折れそうになる。必死に表情に出ないように落ち込む。知ってて来ないんだから、そうだよな、と今更納得する。

 「落ち込むな、少年。」

 先輩は巧の内心を察するように肩に軽く手をのせた。猫実さんの手とは違う感触だ。骨張っていて細い、くすぐったい感触だ。

 「手伝うことはできる。」

 「え。」

 先輩の顔を見ると、真面目にそしてどこか悠々として笑っていた。

 「使えそうな奴がいるから紹介するよ。」

 「ありがとうございます。」

 猫実さんは、無邪気にそう言う。先輩は早速教室に戻って、誰かを呼びに行った。

 


 「こんにちは、山崎兼信です。手伝うことがあるんだって?」

 先輩が「使えそうな奴」として、紹介してくれたのは生徒会長だった。

 「あ、会長お久しぶりです。」

 猫実さんは面識があるらしく、ペコリとお辞儀をする。巧も前に生徒会の手伝いをしに行ったときに少し話した。

 「あの、今、お助けカフェというのをやってまして。」

 猫実さんが両手で、会長にチラシを差し出す。

 「生徒の交流スペースを作ったんだって。」

 夜桜先輩が、ぽんと横から会長の肩に手を乗せる。背の高い夜桜先輩なら誰にでも載せ放題だろう。しかし、会長に対しては妙な圧力がある。巧は、お助け部の愛ゆえだと解釈することにした。夜桜先輩が会長の弱みを握っているとかではないだろう。…多分。

 「いいね。すごくいいよ。」

 会長は、しばらくチラシを見てうなずいた。読んでいる間、三人でじっと会長を見ていたのだか気にしていないのか、けろりとしている。その笑顔は爽やかだった。

 「お助け部には、何度か手伝ってもらったし、今度は生徒会の方から力になるよ。」

 「ありがとうございますっ。」

 猫実さんはうれしそうにぴょんと跳ねた。

 「生徒会の広報のネタになるね。」

 夜桜先輩は抜け目なく、交渉を続ける。

 「そうだね、相談してみるよ。」

 山崎会長はすんなりうなずく。

 巧は夜桜先輩の手際の良さに舌を巻く。十分間で、生徒会を見方につけてしまった。

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