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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
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応えはある

 「わたしたち、まだやっていてもいいんですかね」

 猫実さんはお助け部の部室に戻る廊下で言った。ちょうどそのとき、職員室の前に来ていた。お助けカフェの机と椅子が並んでいた。

 巧は猫実さんのその不安がわかるような気がした。やりたいことならいくらでもある。書きたいことはいくらでもある。それを阻むのは何なのか。今の自分たちにはそれがわからない。いつくるのかもわからない。だから、「やってていいんですか。」と誰かに聞きたくなる。

 「いいんだと、僕は思います。」

 巧は言った。

 「そうですか。」

 「ごめんなさい、それしか言えません。」

 あわてて打ち消した。しかし、打ち消すつもりが、かえって消えることのない確かな感触を感じていた。

 猫実さんが何と言おうと、「いいんだ」と自分は言うだろう。それしか言えなかったとしても、それだけは言うことができる。

 「明日も頑張りましょうね。」

 猫実さんは誰も座っていないテーブルを軽く撫でた。巧は立ち止まって、その後ろ姿を見ていた。

 「毎日ですか。」

 「…わかりません。」

 猫実さんはめずらしく、しらないふりをするように、口をつぐんで巧を見た。

 巧もどう応えるのかわからなくて、その場で立っていた。

 「毎日、頑張るの大変でしょうね。」

 巧はそうつぶやいた。小説も書きながら、お助けカフェもやっていて、巧は課題に十分手を付けられていない。少し寝不足気味である。しかし、どれだけ忙しくても書くことは止まっていない。むしろ、やめられない。書けば書くほど、まだ汲み尽くせないものが見えてくる。書くことは、自分に応えてくれている。「まだ書いていてもいいですか。」と問いかける巧に、まだいいのだと、応えてくれている。その応えが返ってくるうちは、書いていようと思う。いつか応えが返ってこなくなるかもしれない。しかし、それは今ではない。そんなことは、考えることもできない。

 「ええ、そうですね。…巧さん。」

 猫実さんはくるりとターンして、巧を見た。上履きが軽く床をける音と同時にピタリと目があった。

 「わたし、あんまり明日のことを考えていないんですよ。」

 何がおかしいのか、猫実さんは明るい顔でいった。秘密を打ち明かす魔法少女の様に言った。

 「だから、わかりません。知りたいとも思えません。」

 「そうですか。」

 巧は不思議な気持ちで、ただ聞いていた。猫実さんは、もう一度大股で、一歩、巧の前に戻ると、

 「行きましょう。」

 と巧の肩を押して歩かせようとした。たったこれだけのことで、巧の心は晴れたように、明るくなる。不思議だと、ただ思う。

 猫実さんは何を信じて、何を踏み込んで、明日に向かっているのだろう。自分なら、どうその問いに答えるだろう。なぜ肩を軽く押されるだけで、嬉しくなるのか。不思議なのに、前に進めてしまっている。

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