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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
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気持ちの問題?

 巧は「はい。」と挨拶をする。リッカーは、つま先をぎりぎりまで立てて、上の方にある本を狙って手をのばした。巧は手伝ってあげようとしたが、おせっかいかと思って何もできなかった。結局、リッカーが本を取った後に、近くにあった踏み台を引きよせて、彼女のそばにおいた。

 「どうぞ。」

 「ありがと、さすがお助け部。」

 リッカーは本から顔をあげて親指をぐっと立てた。

 巧はそのまま立ち去ろうとしたが、猫実さんの顔が思い浮かんで、思いとどまった。

 「あの、リッカー…さん。」

 「ん?」

 図書室で話すのは苦手だが、なんとか勇気を出して会話をはじめた。

 「小説って書きますか。」

 「ん、書くよ。まあ、今はだいたい詩だけど。」

 「えーと、どうしたら書けるようになりましたか。」

 「詩? 小説?」

 「あ…小説です。」

 「ふん、まあ、これとか読んで書いてみた。すっごく短くて下らないものを。」

 リッカーは棚の本を指して言った。ライトノベルの書き方指南の本だ。下らない、という割には誇らしそうに笑っている。なんとなくその気持ちは、巧にもわかる。

 「浅野くんって、書いてるんじゃないの。勝がほめてたじゃん。」

 「いや、僕じゃなくて、書けなくて困っている人がいて。」

 「あ、なるほど。ほかにも書く友達いたのね。その人は何、筆が止まってる感じ?思いつかなくて?」

 「うーん。そもそも書き出せない、みたいな感じです。」

 巧は原稿用紙の前で、じっと固まってしまう猫実さんを思い出す。石のように動かなくなってしまうのだ。言葉を発せなくなる呪いをかけられた人魚姫のようだった。それを見てから、巧のほうも無理に書かせるようなことはできない。

 「小説って、文章さえ書ければ誰でも書けると思うよ。気持ちの問題じゃない?」

 リッカーは重そうな大きなフレームのめがねをずり上げた。レンズの向こうの目は、大人しそうだが意見はきっぱりとしていた。

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