マスコットキャラクター
二人はそのまま、何も言わずに百円ショップについた。駅ビルの中に入って、食料品売り場を横切るとそこにあった。巧は気を使って何か楽しいことでも言おうと思ったが、猫実さんに無理した自分を見せるのは嫌だった。それに、猫実さんならそのような自分をすぐに見抜いてしまうだろう。
歩いているあいだ、ずっと猫実さんは考えていた。
「やっぱり巧さんのこともっと知らないとな。」
雑貨の棚の前で、猫実さんは振り返って巧の方を見た。買い物のことはあまり考えていないようだった。
「いつも、巧さんの意見にはっとさせられるんです。お助けポストの置く場所も、今回のカフェだって。私には見えてないものが見えてますよね。」
「そうかな。…そういうのが苦手なだけなんだけど。」
「いいえ、それがいいんです。巧さんは嫌かもしれないけど、私にはそういうひとの意見が必要だったんです。」
猫実さんは、巧のうでをつかんだ。突然触れられて驚く。驚いた巧の顔を見て猫実さんが手の力をゆるめる。そして、そっと手をはなす。巧はもっと感情を抑えれば良かったと、離れていく体温を名残惜しく思う。猫実さんはすみません、とくちごもってまた店の中を歩き出した。
色のついた大きめの紙を買った。これにお助け部の紹介や、お悩み相談を書くつもりのようだ。ビニール袋をもらうかわりに、二人で手で持って帰った。
部室の広い床に広げてレイアウトを考える。巧は文章を考えないといけないと思ったが、猫実さんがスラスラと説明する言葉を言いながらノートに書きとめた。
「なんか言葉だけだとつまんないなあ…。」
「猫実さん、絵をお願いします。」
「いや、お助け部の絵って何を描けばいいんですか?」
くいっと首を傾げて猫実さんが問いかける。巧も戸惑う。二人の似顔絵でも描くのだろうか。
「あ、マスコットキャラクターを作るとか。」
「それだっ。」
猫実さんは手を打って、賛成する。
「お助け猫とか。」
巧は頭に「お助け部」とかかれた鉢巻をつけている猫を想像した。助けるべき人を見つけると、すぐに駆けつけるのだ。
「猫は恥ずかしいですっ。」
猫実さんはぷいっと顔を背けてしまった。そのかわりに、スケッチブックにペンを走らせる。
「お助けピョン吉です。」
猫実さんは、「お助け」という鉢巻をつけたうさぎを描いた。
「やっぱり、お助けって鉢巻のイメージですかね。」
巧は偶然の一致に笑ってしまった。猫実さんは不思議そうにペンを持ったままきょとんとしている。




