お助けカフェ
「なんかすみませんねね。」
「いや、いいんです。巧さんの意見は大事ですから。」
猫実さんは手をひらひらとして、打ち消す。巧の方は落ち着かない。
職員室から出て、二人はまた部室に戻る。巧の手には小さな相談箱、「お助けポスト」がある。木の材質が良いのか、手触りがしっとりして気持ちが良い。お助け部のためにちゃんと作ってくれたのがわかる。
「置いてみる価値はあると思います。職員室の前とか。」
「ええ、なんかブースみたいなのがあるといいですね。相談に応える掲示板とかがあって、昼休みはそこで食べながら話を聞いてあげたり。」
「なるほど。」
巧は、猫実さんの思い描くビジョンを想像した。
「なんか、職員室の前にクラス関係なく集まれる場所みたいな…。カフェ的な空間があるのかな。」
「あ、そうかも。」
猫実さんは何かが引っかかったのか、歩きをゆるめて考えはじめる。
くるり、と今来た方向を振り返る。ポニーテールがふわりと浮き上がる。巧も振り返って、職員室の方を見る。廊下が広くなっていて、広場のようなスペースがある。掲示板や、自動販売機コーナーもあって休み時間なら、いろいろな生徒が行き交う場だ。
「あそこにカフェを作るとしたら…。」
猫実さんは巧に目配せをして、もう一度、職員室の前のスペースへと歩き出した。巧もついてゆく。ねこざねさんの歩みは揺るぎなかった。
「えっと、ここらへんに机を置いて、四、五人座って。それをもう一つぐらいのスペースができますね。」
猫実さんが手広げて、尺をはかる。広場があるといっても、全てを使うわけにはいかない。
通行の邪魔になるし、机を運搬するなら準備も大変だ。実際にカフェを作るとしたら四、五人座れるスペースが二つあるかないか、ぐらいだ。
しかし、それで何ができる?
人は集まるのか?
巧は何も言わずに猫実さんの考えをきいていた。
「よし、ここをお助けカフェと名付けよう。」
新大陸を発見した冒険家のように、猫実さんは高らかに宣言した。冒険家の助手として、巧は隣でただうなずく。
「どうですか」
次の日、猫実さんは企画書を書き上げて、金子先生に見せた。先生はパラとホッチキスで閉じられた二枚の紙をながめる。猫実さんがかいた絵が見える。五人の生徒が机を寄せ合って談笑している。本人は、金子先生の反応をじっとうかがっている。




