お助けポスト
「んで、これを各教室に置きたいの?」
金子先生のデスクにはお助け部の部室のドアにかけてある、小さな赤い木箱が置かれている。いちおうだれでも、相談やお助け部への質問を、紙に書いて投函できるようになっている。
「はい。」
猫実さんは、キッパリとうなずいた。横で見ている巧もうなずく。
「うーん。まずは部費がないから手作りは必須ね。」
金子先生は丸いすを回転させて、巧たちの方を向くと、足を組んだ。夏休みに旅行でも行ってたのか、肌がこんがり焼けている。新しくなった職員室のデスクも居心地が良さそうだ。
「そのへんは、自分たちでやるので、良いか悪いかだけ。」
「まあー、掲示物みたいなもんだから、いいんじゃない?」
金子先生は、箱を手でふれた。小さな家のように、三角の屋根が乗っていて、正面には紙を入れるためのスリッドがある。
「よくできてるなあ。」
「キュウちゃんという先輩が作ってくれて。」
「へえー、何部?」
「いや、別の学校というか、社会人です。」
「そうなんだ。まあいいけど、しっかりさは大事だよ。ほら、悩みなんてプライバシーの一つだから。」
金子先生の口からプライバシーという言葉が出るとは思わなかったが、確かに正しい。
猫実さんは律儀にうなずきながらメモをしている。
「いや…でも。教室の中って、みんな見てるじゃないですか。」
巧はやっと発言した。
「そうです。だからいいんでしょう。」
猫実さんはペンを唇の下に当てて、首をかしげた。
「いや、僕だったら恥ずかしくて自分が悩み事を書いて入れてるのとか見られると思うとできません。」
「…」
「…そうだなあ。」
女性二人は、意外なほどに言葉を失った。巧はなんだか、もっと早めに言えばよかったと後悔した。




