再考
「誰か思いつきます?」
思ったより最初の一人探しは難航した。猫実さんは、周りの人をあたってみたのだが、自分の困りごとが校内放送で公開されるのが嫌で断る人が多かったそうだ。
「悩みって、誰でもあると思うんですけどね。」
巧は猫実さんのスケッチブックに目を落とした。
猫実さんが頼んだ人の名前が列挙されている。山形さん、横田さん、根岸さん、加藤さん…。ことごとく名前の横にバツ印が描かれている。
「校内放送ってハードルが高いですね。全校生徒の前で話すようなものですから。」
猫実さんが口を固くとじて考えこむ。
「そうなると、文化祭で考えている公開お悩み相談も難しいと思います。」
巧は猫実さんを責めないようにひかえめに言った。
「そうですね。」
傍目に見ても猫実さんの頭でぐるぐると思考が回っているのがわかる。巧はどちらかというと、手を動かしながら考えるタイプだ。彼女のような沈思黙考型の人の頭の中がどうなっているのか、気になる。
「まずはすこし、ラジオのことからはなれて、お悩み相談をすることを最優先します。それすらもやったことがないのに、いきなりラジオはちょっと、難しいです。」
猫実さんの意見は慎重だった。
「例えば文章だけでもオーケーとか、条件を簡単にして出てもらいやすくするのは?」
「それもいいんです。」
猫実さんはすぐさま返す。
「ただ、やっぱりどのような形で出演してもらうかは、相談する人が決めるべきで、わたしたちやラジオの都合を先に決めてしまうとだめなんです。」
猫実さんは、巧が理解できたかどうか目線を送った。
「そうですね。もしも、僕だったら一人でゆっくり相談したいと思います。」
当の巧が、引っ込み思案だった。
「うーん。そうですよね。」
猫実さんが、目をほそめて同情してくれた。




