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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
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ほんのひととき

 孤独のスタイルは、人それぞれなのだな、と巧はぼんやりと考えながら弁当を食べた。教室で、じっと一人で食べるのが自分のやり方だった。さっきの彼女のように屋上で一人で食べるのもいいかもしれない。今日は勝浦たちがいて、一人きりではないだろうけど。

 

 窓の外は、まぶしいほど青い。九月はまだ夏の続きだ。今ごろ屋上で、一人で食べている彼女を想像する。さびしいだろうか。それとも、綺麗な空を見上げながら、ただ食べているのだろうか。心配するのは余計なお世話だと思うが、考えずにはいられない。


 勝浦を追うのに時間を使ってしまったので、食べ終わったころには、休み時間は五分しか残っていなかった。弁当をしまうと、代わりに本を取り出した。読みはじめようと思って手が止まった。勝浦の言葉を思い出した。本をしまって、夜桜ファンを取り出した。


 けばけばしいピンクの表紙は、何度見ても恥ずかしい。夜桜先輩を愛する者たちの、情熱、いや怨念の結晶。そういう風に、何かを強く念じることが、巧は怖いと思った。先輩のような、誰もがあこがれる人に対しては、なおさらそうだ。

 

 どうして勝浦は、それができるのだろう。考え始めると、教室で談笑している生徒たち全てが疑問に思えた。どうして、誰かと何も考えずに、自然に笑ったり、語り合ったりできるのだろう。


 帰りのホームルームが終わる。

 「浅野。」

 勝浦の声がした。

 巧は振り返る。

 「途中まで一緒に行こう。」

 勝浦はいつものように巧の肩をたたいた。

 「今日も文学部。」

 「ああ、毎日や。」

 「すごいね。」

 「どうせ、浅野も毎日書いてるだろ。」

 勝浦は、眉をくい、とつりあげて笑った。

 見抜かれた、と知って巧は恥ずかしくなる。ただうなずく。

 「あの。そういえばこれ、見せたいと思って。」

 そういえば、が何にかかっているのか知らないが、巧はとつぜんバッグの中をあさりはじめた。勝浦が足をとめる。巧が取り出したのは、原稿用紙の束だった。差し出された勝浦は、目を見開いて、巧を見る。

 「これ、お前が書いたのか。」

 原稿用紙と、巧を交互に見る。文字が紙を埋め尽くし、束になり質量を持つ。そこまでのエネルギーが、いとも軽々しく取り出されて、あぜんとしている。

 「うんまあ、無駄に長いだけ。」

 巧は両手で、それを支えながら、軽くゆらす。勝浦はうながされるまま、それを手に取る。

 「うお、おもい。」

 思わず、笑いながら巧を見る。巧もそれを見て笑う。勝浦がそれをバッグにしまうと、また二人は歩き出した。

 「あの、桜侍、どうやって書いたの。」

 「どうやって? まあ、ストーリー考えて、プロット立てて、意見もらって小説書く。」

 勝浦はすらすらと応える。話なれている風だ。

 「プロットと小説ってちがうの?」

 「プロットは、うーん、台本見たいなものや。大体こうなって、って書いとく。それを見ると、ここではこう書くとかがわかる。」

 「うーん。それを書くぐらいなら早く書きたいってなっちゃって。」

 「あー。別にいいだろ。リッカーもプロット書かないですぐ書くって言ってた。」

 「へえー。」

 巧はほおが勝手につりあがって、動いてくるのを感じた。こんな会話が楽しくて仕方がない。今すぐにでも、書きたい気持ちがわきあがった。

 勝浦は新部室棟。巧は、校庭の脇のプレハブ棟に分かれてっいた。ほんのひとときの会話が終わった。

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