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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
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声をかけたい!

おもむろに夜桜ファンをバッグから取り出した。別に、巧は先輩のファンだと自覚していないが、これを持つとその激しいピンク色に目がくらくらする。そして、いやでも教室で目立つ。巧は、それを机の上に置いて、教室を見回した。


 勝浦はどこだ?


 いつも最前列に座っているため、うしろをふりむかないと座席が確認できない。隣の柴田さんが、巧の不審な動きを察知する。

 「浅野君、…どうしたの?」

 周囲の目線が巧に集まる。後ろの席の二人も談笑をやめて、巧をみる。巧の手には狂気的なピンクの冊子が握られている。

 「あ、それって夜桜ファン?」

 名前の知らない真後ろの女子が指をさす。

 「浅野君も、夜桜先輩のこと好きなんだね。意外だわ。」

 久しぶりに休み時間に人と会話した。慣れない状況にほおが暑くなる。

 「あ、勝浦君って知ってる?」

 「勝…アイツどこ行った?」

 うれしいことに巧と一緒に探してくれる。しかし、教室を見回してもいない。

 「トイレかも。」

 三十秒程で、結論に達した。

 「うん。」

 「……」

 「……」

 「てかさ、英語やばくない。」

 「うん。それな。」

 「藤原、宿題出しすぎだし。」

 「今日、英1ある?」

 「あるよ、五時間目。」

 「だるっ。一番眠い時じゃん。」

 「…」

 巧は音を立てずにちゃんと前を向いて座り直した。

 

 十分休みが終わるぎりぎりに勝浦は戻ってきた。巧は声をかけて良いかわからなくなった。机の夜桜ファンを見た。


 彼の小説がとても面白かった。そう言うだけだ。もしかしたら、巧が書いたものを見たいと言うかもしれない。そのために、完成している手書きの小説を持っていった方がいいかもしれない。


 巧の中で脳内シミュレーションが始まる。

 思いきって席を立ったときには、金子先生が教室に入ってきた。

 「はーい。国語の時間だよ。あ、浅野、何立ってんだ?」

 金子先生は、出席簿を使って巧を銃で打ち抜くような仕草をする。仕方なく、巧は席につく。巧が座った瞬間、委員長が「起立」と号令をかけた。巧は高速でスクワットすることになり、足がつりそうになった。

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