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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
35/118

お客さん

「ごめん浅野、許してくれ。」

 勝浦の後頭部がとつぜん振り下ろされた。巧はとっさに後ずさる。廊下に彼の謝る声が反響した。腰を直角に曲げて「ごめん」ともう一度勝浦が言った。

 巧はあわてて、彼を元の姿勢にもどそうとして「いやいやいや」と口ごもりながら、周りをきょろきょろ見回す。

 「いいから、顔をあげて。」

 やっとその言葉を言うと、少し語気が強くなってしまった。

 勝浦はすっと顔をあげて巧の目をみた。茶色の大きな瞳だった。何を言っていいのかわからずに、巧は目をそらす。こうしていても、立っているだけになってしまうので、「お助け部はこっちだよ。」と歩き出した。

 

 勝浦は巧を部室まで送る、と言ってついてきた。巧はそうする必要がわからなかった。しかし、勝浦はどうしても送らせてほしいと申し出た。リッカーと村田先輩は緊張した目で巧を見た。勝浦が少し意地になっていたので、意見が衝突するのを心配したのだろう。

 

 「オレ、本当に感心したんだ。」

 勝浦は、ほおを指でかきながら言った。

 「クラスで目立たない浅野が、あんな真剣に書いてるなんて。」

 勝浦は照れたように、全然違う方を向きながら巧をほめた。巧が見ているのに気づくと、わかりやすく作り笑いをして、

 「あ、目立たないって悪い意味じゃないぜ。えっと、お助け部ってどっちだ? こっちか? いやこっちか? 」

 とうろちょろと廊下を見回す。巧はそんな勝浦が面白かった。

 むずかゆい気持ちになって、

 「いや、書くのが好きだから。」

 と言った。

 「そっかそっか。浅野はなんでお助け部に?」

 「…」

 なんでと言われても、うまく答えられなかった。

 勝浦はそんな巧を見て、

 「まあ、やりたいことをするのが一番だしな。浅野はそのままでいいわ。」

 と、ぽんと背中を軽くたたいた。巧はなんとなくうなずいた。


 校庭に出てプレハブ棟に向かう。学校の工事は終わってないようで、このプレハブ棟もいつかは違う建物になるのかもしれない。

 お助け部、と猫実さんの字で書かれた看板を見て、勝浦は目を丸くした。

 「はあ、本当にあるんだな…。お助け部。」

 「うん。中も見る?」

 巧はドアを開ける。

 教室ひとつより、やや小さい空間に、ポツンと机が二つ並んでいる。物は小さなカラーボックスにノートが並んでいるだけだ。そのあっけなさに、勝浦は驚いたようだった。

 机に座っている猫実さんと目があう。何か書類を見ていたようだ。机の上に、ボールペンと紙が何枚か置かれている。

 「お、巧さん…、あれ、お客さんですか?」

 猫実さんは、勝浦を見て、ニコニコと、やわらかそうな頬を緩める。

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