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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
33/118

あのおとなしい浅野が

 文学部の部室には、大きな机が一つ真ん中にある。そこに部員が座って、作品を作るのだろう。じっと向き合いながら、書く気分は想像できない。巧なら部屋の隅においてある一人用の学校机に座って書くだろう。


 「さて、さて、書いたものみせてくれよ。」

 勝浦が、目をきらきらさせて、巧を見る。同時に、何かを試すような目だ。

 「ちょ…まずは自己紹介でしょ。」

 「サノ君だったっけ。」

 先輩に言われて、巧は訂正する。

 「あ、浅野です。」

 「何年生?」

 「一年生。」

 人差し指を立てて、「一」と指し示す。

 「じゃあリカコ達と同じだ。」

 「オレと同じクラスです。」

 勝浦が胸に手をあてて言った。

 「わたしは、村田三矢(みや)。今二年生で、文学部の部長やってます。よろしく。」

 「村田先輩ですね。」

 「うん。」

 名前をききまちがえていないか、巧は確認した。わからないまま後で聞き直したりするのは気まずい。

 「あたしは、小峰立花(りっか)です。リッカーとかリカコとか呼ばれたりします。」

 「小峰さん。」

 「リッカーでいいよ。」勝浦が言う。

 「あ、じゃあ、リッカーさん。」

 と巧が言うと、こくりとうなずいて「さん、はいらんけどね。」と黒い大きな眼鏡をずりあげた。

 「んで、オレは勝浦(かつ)。よろしく。」

 勝浦は文学部というより、どこかの運動部のように見える。声もはきはきしているし、背が小さいとはいえ、体はがっしりしていて大きく見える。

 「浅野君も小説書いてるの?」

 村田先輩が、落ち着いた口調できく。冷静だが、怜悧な感じはしない。ちゃんと対応すれば聞いてくれる、と安心して巧は言葉を選ぶ。

 「書いてるんですけど、今見せられるようなものはなくて…。急に勝浦に連れてかれて…。」

 巧は机の上の「夜桜ファン」に目を落とした。

 「勝、どういうこと?」

 「あ…いや、つい…。」

 村田先輩に問い詰められて、勝浦は口ごもる。その隣からリッカーに、ぺし、と手の甲で叩かれる。

 「いやでも、凄かったんだぜ。さささささーって、鬼気迫る目で…。あのおとなしい浅野がこんな顔するんだって。」

 リッカーの手を払いのけて、勝浦は必死に弁解する。

 「なあ。」と目を向けられた。巧は、彼が本当に自分の書く姿に感心したのだと今更、気がついた。

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