こちら文学部
夏休みのあいだに、工事が終わって新しい建物ができていた。現代的な明るい色をした床がつやつやと光っている。新部室棟である。
段ボールや道具が運び込まれてそれぞれの部室で引越し作業が行われている。巧はお助け部のことを考えて、急に猫実さんが心配になった。
早く誤解を解いて開放されたい。
「ちょ、おい、勝、引越し手伝ってよ。リッカーも」
段ボールを持った女子生徒が、こちらを見ている。ひざで箱をささえて、部室のドアをなんとか開けようとしている。
勝浦たちは、返事をして手伝いにかかる。残された巧は、立ったまま三人を見守る。
「今日は本の整理するって言ったでしょ。」
「すいません。」
勝浦たちはペコペコと礼をして、段ボールを支える。
「ん、彼は?」
巧はまたもや説明を求められる。
「浅野巧です。」
「小説家です。」
勝浦が茶化したので、巧は首を振って否定する。
「ん…まあ、あとで。」
上級生らしき女子生徒は部室の鍵を開けると、中に入って行った。
巧は入っていっていいのかどうかもわからず、立ち尽くしていた。
手持ち無沙汰になった巧は、勝浦から受け取った「夜桜ファン」をパラパラとめくり始めた。結構しっかりした製本だ。目次を見ると夜桜先輩についての記事が書かれているようだった。誰が撮ったのか、先輩のポートレートが印刷されている。制服姿のまま控えめにこちらを向いて、にこりと笑っていた。
部室の中で三人が本の整理をしている。勝浦が段ボールからひたすら本を取り出した、棚に並べる。その並べ方が気に入らないのか、リッカーがちょんと背伸びをして順番を入れかえる。名前がわからない先輩は、言いあう二人のあいだに立って指示をしている。
リッカーが、部室のドアに向かって近づいてくる。外から見ている巧と目があう。とっさにおじぎをすると、彼女は不思議そうに、おじぎを返した。何やら窓に紙を貼っている。
「文学部 新入部員募集中」
と印刷されていた。




