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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
新しい始まり
30/118

エンカウント

 校長先生が何やら演説をする。いつもきこえない。巧は聞いているふりをして、静かに机に座っていね。そして、小説の続きを構想する。


 夏休みの残りは、ぼんやりとしているうちに過ぎた。具体的な小説という形にはならなかった。


 演説が終わり、ホームルームが終わり、掃除が終わる。放課後の時間が始まる。とたんに騒がしくなって、しばらくすると静かになる。その静けさが好きだ。何も聞かなくていい静けさが好きだ。空っぽになった教室をながめながら、想像の世界を歩くのは楽しい。


 「なあ。」

 不意に後ろから、声をかけられた。背が低くて、目が鋭い短髪の少年。妄想が中断された反動で、巧は身をすくめた。「気の強い男子生徒」なんて天敵以外の何者でもない。


 「いやいやいや、何でこわがる。」

 防御姿勢をとる巧に笑いながら、近寄ってくる。そしてかまわず、ぱんぱんと背中をたたく。猫実さん以外の人に触れられたのは久しぶりだ。

 「何......ですか?」

 先輩の可能性もあるので、敬語できく。

 「見たでぇ。」

 「でぇ……?」

 「お前も小説書いてるだろ?」

 耳元で言われると、変な気分になる。巧はうんともすんとも言えなくなる。

 「休み時間にせっせせっせと書いてただろ……。あれ、小説?」

 「うん…。」

 巧は教室で小説を書いていた。誰にも話しかけられないし、思いついたらすぐ書きたいからだ。

 よく見ると彼は、同じクラスの勝浦だった。声が大きかったので、自己紹介の時に、唯一、ききとれた人だ。

 『勝浦勝です。よろしく』

 とハキハキとさけぶように言っていたのを憶えている。その時は「勝浦勝、小説に使えそうな名前だ」としか思わなかったが。

 「んで、俺も小説書いてるんだぜ。」

 といいながら、勝浦はバッグからビンク色の小冊子をとり出した。表紙に桜のイラストが散りばめられている。そして、金色の文字で『夜桜ファン』と印刷されていた。

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