余韻
AFTERGLOWの演奏中、
ゲンサンは、目立っていた…。
首から『憩いの湯』のタオルを提げ、
片手に電池式の優しく灯る蝋燭を振り
もう片方の手には毛筆であふたーぐろう
と書かれたうちわをパタパタさせていた。
源次郎の出で立ちは
ステージで演奏していた
メンバーにもすぐわかるくらい
「見つけやすかったわ笑笑」
というほどだった。
逆に、目立って良くね?と
ファンが囁いていたらしい。
LIVE HOUSE EMBERに通うファンの間で
毛筆を使ってうちわに書くのが
ちょっとだけ、流行った。
LIVE終了後、RE:PLAYのメンバーが
挨拶にきて
「音が重厚で、俺達ファンになりました!
AFTERGLOWの単独ライブやるなら
絶対来ます!」とか
「会場のお客さんたちも、バチクソもりあがってました!」
とか言ってくれて、ありがたかった。
トドメに、「あの謎のおじいちゃんまで虜にして、マジ感動しました!!」
なんて事も言われてしまった。
森田爆笑
だけど森田は、
「あのおじいちゃん、人間の器スゲーんだよ。
俺、あんな風になってみたいくらい。
俺達の事見にきてくれたら、またあのジジイに会えるかもな!!」
と、話してた。
普段、くそジジイみたいな事ばっかり
ゲンサンに言うけど、
森田なりに絆されたんだな
って大志は思った。
「お疲れー!!曲最高だったよ!」
の声に振り向くと、
神谷玲二が笑顔全開でこちらに
来ていた。
「おう!今日もサポートありがとな!
キーボード良かったよ!」
大志は
そう言いながら、玲二とグータッチした。
高瀬も
「おー玲二ぃ!ありがとう!
片付けたら、打ち上げやるけど来るか?」
玲二の答えはもちろん
「行く!久々に飲もう!!」
「あー、1人おじいちゃん混ざってるけど
ビックリすんなよ!」
森田はそう言って少し離れた所にいた
ゲンサンを手招きした。
神谷玲二
AFTERGLOWのサポートメンバーで
高校時代からの付き合いだ。
何度か正式メンバーに誘ったけど、
「勉強が大変だから、ごめん。」
と、言われていた。
確か、成績が学年で常に上位にならなければ
好きな音楽はさせない。
と親にキツく言われていたからだ。
教育熱心な親御さん。
社会人になっても、親がうるさいらしい。
だけど、玲二にしてみたら…。
親が嫌で仕方なかった。
高校生の時に、大志が聞いたことがあった。
「玲二の親、もう少しゆるーくしてほしいなぁ、勉強とバンドで、大変だろ?おれ
心配。」
玲二は、曇りがちな表情で
「過干渉な親は、毒だよ。自分の思い通りに俺が動かないと、すぐヒステリックになるんだ。
バンド活動なんて、本来なら許されない。」
大志は目を丸くする
「なぁ、玲二…おまえ俺たちと一緒にいて
辛くない?無理はしないで欲しい。
玲二と一緒にやりたいって、俺押し付けすぎた
ごめん。」
「俺は大志達と過ごす時間が唯一
大切なんだよ。バンドやらせてくれないなら
今すぐ高校も辞める。って言ったんだ。
正直言えば、それからかなり揉めた。
でも、いいんだ。」
本当なら、なりふり構わず家出してもよかった。だけど、親が大志達に何をするか
わからない。
学校にも怒鳴り付けにくるかもしれない。
ギリギリの所に、玲二はいた。
それでも、皆と過ごす放課後を守りたかった。
そんな気持ちを抱えたまま
35才になっていた。




