曇天。
美緒は、帰り道決心していた。
直人の事は嫌いではない。だからこそ
別れるなら早いほうが良いと思った。
美緒の勝手だけれど
直人の人生の可能性。それを少しでも
多く残すこと。
あんなにいい人だから、新しく家庭を築いて、
…子供だって。いつか。
うん。今日話そう。
美緒は最低だと自分でわかっていた。
綺麗に離婚できるなんて、思ってない。
午前0時過ぎ。直人が帰宅した。
美緒が起きて待っていたのに気付くと、
直人は「いやー遅くなってごめんなぁ、
あいつらに独立の話したら盛り上がっちゃって!!
酒も全然飲めなかったよー。」
機嫌良く話す。
「今後の事?」
「うん、そしたらさ、森田だっけな、
何でも屋さんやるとか?なんて言い出して
もりあがっちゃって。」
「…………………」美緒が下を向き黙る。
「あぁ、ゴメン!美緒、疲れてるのに。俺に構わないで、寝ていいから」
美緒が顔を上げて、直人をまっすぐ見ながら
「私、直人と、別れたいの。離婚…したい。」
直人が言葉を理解するまでに、そう時間はかからなかった。
心臓の鼓動が一気に早くなる。
「美緒、悪い。俺ちょっと数日家あけるから」
直人は急いで寝室へ向かい、
キャリーケースをクローゼットから
引っ張り出す。
スマホを出し、アドレスから大志の携帯番号を探し、コールをする。
キャリーケースの中に
スーツを何着か放り込んだ。ワイシャツ、
下着類。細かいものは、買えばいい。
ギター2本も一緒に。
車に荷物を積み込むと、運転席に座り
少しの間、ステアリングに突っ伏した。
大丈夫。今日は酒を飲んでない。
久しぶりに大志達との話に夢中だったのが
幸いだった。
いつもは大好きな
エンジンの音が、妙に響く。
1時間もかからず、直人は
大志のマンションのインターフォンを鳴らしていた。
1人になった美緒。ダイニングテーブルには
クレジットカードが1枚。
直人が、出る時、
「コレ。生活費に使ってくれ!
数日すぎたら…週末にはこの家に戻るから!!
ちゃんと話そう!」
と言いながら置いていった。
美緒はカードを手に
泣き崩れた。
こんなに酷いことを言った私に
直人の、優しさが、気遣いが
辛かった。
それでも。今すぐ亮ちゃんに会いたい。




