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レクイエムはまだ捧げない  作者: コラソン


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36/57

柴崎美緖


直人は今夜、昔のバンドメンバーと

飲みに出掛けていた。


最近の直人は、昔からの仲間と楽しそうに

している。



直人の妻、美緖は、行きつけの

バーのカウンターに座ってカクテルを飲みながら、

マスターに親しげに話しかける。

「亮ちゃん、話って言うか、相談なんだけど。」


「おう!聞くよ!まだ、お客さんいないし。」

と、朗らかに答える。


彼は、藤堂亮。美緖の幼なじみで

長い付き合いだ。


「おれ、バーカンやりたい!」と亮が宣言した時

親を含め「どうせ上手くいかない」と周りが反対した。

美緖だけは、亮の決心を間近で見ていたため

応援していたのだった。


幼い頃から、愛想が良くて、朗らかな亮は

それなりに男女に好かれていたから

バーの仕事は、ピッタリだった。



美緒は、ため息のような深呼吸をして、

「あの、亮ちゃん。私離婚したいの。

直人が、どんなにいい人でも。」

いきなり切り出した。


亮は、新しいカクテルを作るために

持っていたシェイカーの手が止まる。


「え。」


「私と直人、子供いないでしょ。

作りたくないのよ。だから内緒でピル飲んでる。」


亮は慌てて店のドアノブに掛けてある

オープンを、クローズにひっくり返して

内鍵をしめた。


「今日は、お酒はやめて、話をしようか」

亮がそう言いながら、烏龍茶を美緖の前にだした。


美緒は何度も考えた。


直人は、弁護士だ。収入は充分ある。

生活に不安はなかった。


直人の性格は穏やかで、弁護士の職業だからなのか、話をいつもちゃんと聞いてくれる。


直人は、大好きなギターを買ったりしていたが

遊んで歩く事もないから、趣味があって良かったと、逆にホッとしていた。


一緒にいて、充分過ぎる程。

普通なら離婚の原因なんて、見当たらなかった。


目の前の亮を見る。


「今日は、亮ちゃんと話がしたい。」


美緒は、いつになく真剣な顔だった。








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